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第104話 *

「……どうにでも、上城さんの、好きなように」  して、と最後はため息で音にならなかった。上城の首に手を回して抱きよせ、自分から唇に触れれば、相手は目を細めて笑みを深くした。 「わかった」  上城が指を抜いて上半身を起こした。  右手で陽向の左足首を掴むと、持ちあげてひらくようにする。身体に力の入らなくなっていた陽向はされるがままにした。 「今日は準備がないんだ」  俯きながら告げてくる。 「けど、なるべく手加減するから」 「……ぅん」  よくわからないけど、きっと任せておけば大丈夫だろう。信用できる人だし、ここまできたらもう、上城にみんなくれてやる。そんな気分だった。  上城はネクタイを手早く抜いて、ベストとワイシャツを脱ぎ素肌をさらした。  スラックスのベルトを外すその姿を、陽向は蕩けた眼差しで見つめた。  筋肉質の身体は、隆々というわけではなくて、むしろ全体的に細身だ。しかし無駄の一切ないシルエットは努力して作られたものだということがよくわかる。暗い灯のもと、シャープな陰影が際立っていた。  ボクサーパンツをさげると、中から勃起した分身が姿を現す。初めて見る、形を成した相手の欲望だった。  陽向は思わずそれに見入ってしまった。  先程から直立していた自分のものが、上城の凶器のような男の象徴に呼応する。血の巡りが早くなり、脈動がこめかみから下腹まで直下して、欲しいと訴えかけてきた。  上城が、瞳だけをあげてきた。挑むような強さと、同時に痛めつける相手への罪の意識を宿らせて。眉根をよせたその顔は、今まで見たことのないものだった。  陽向は頭のてっぺんから足の先まで、快感の電流が駆け抜けるのを感じた。  そうして、相手と対峙して、自分はただベッドの中で男でなくなるわけではないのだと悟った。  相手が欲しいと思うのと同じように、こっちだって欲しいのだ。愛情と欲望は与えて奪われるだけじゃない。自分だって同じように望んでいいのだ。受け入れるだけにしたって、やられっぱなしでなければいい。 「……は」  息を吐いて力を抜きながら、陽向は手をのばして、上城のものを片手で掴んだ。相手がぎょっとした顔をする。

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