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第106話 *

 下肢がぴったりと密着したまま、陽向は上城の腕の下で揺さぶられた。  上城が頭上にあるベッドのスチールパイプを片手で掴む。  それを引っ張るようにして、さらに力強く動き始めた。けれどゆっくり、緩慢な動作を保っている。  急ぎたくてしょうがないけれど、自分を抑えて陽向がなれるのを待っている、そんな焦れた様子だった。  端正な面立ちが、苦痛を伴う快感に歪められ、俯いて眉をよせている。その表情も魅惑的だった。 「礎さん……いいって」  頬と頬が触れあう距離まで近づいて、話しかける。上城がなんだというように陽向を見てきた。 「俺のこと、好きにして、いいよ……。俺もしたいようにするから」  我慢する必要なんかないから、と唇に自分から触れる。 「……おまえ」  上城が顔をしかめた。 「そんなこと言って」  頭上で上城がスチールパイプを握りしめたのがわかった。  ぎゅっという音と共に、二の腕が硬く盛りあがる。怒ったようにきつく唇をあわせられた。 「こっちはゆっくりやろうと思ってんのに。とまらなくなるだろが」 「……大丈夫」  陽向は無意識のうちに目をとじていた。  視界がなくなると同時に知覚が鋭敏になっていく。下肢に意識が降りていき、やがて擦りあげられる負荷がやってきた。  経験したことのない侵される快楽が、そこから生じてくる。陽向は受けとめるだけじゃなくて、相手にも感じて欲しくて、動きをあわせてやった。  上城は雄の本能で攻めてくる。受けるこちらは自分が何者になっていくのかわからなくなるような感覚に引き裂かれる。  それでも、自分の上にのっている男が激しく突きあげてくるたびに、心の奥底に相手を受け入れる器ができあがっていく気がした。  ――ああ、俺は、この人が好きなんだ。  だからこんな風に変化していくんだ。  今まで知らなかった自分の姿が明らかになっていくようだった。  上城じゃなきゃ、こんな気持ちにはならなかった。他の誰でもない。この人だから、こうなった。 「礎さ……礎さん……」  両手を背中に回して、何度も相手の名前を繰り返す。そのたびにキスで応えられる。陽向のものが再び熱を持ち、上城の下腹に撫でられ揺すられて、また頂まで追いあげられた。

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