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第107話 *

「も、……も、もう、俺、ああ、また……」 「陽向」 「だめ、もう、ああ――」  喉を反らして、切羽つまった声をあげた。上城がそれに煽られ、さらに激しく挿し入ってくる。奥を抉られるたび、やるせない快感に全身が泣かされた。 「おかしくなりそう」  それに答えるように、苦しげな囁きがもらされる。 「……俺も、おかしくなる」  上城が耳元で吐息と共に喘いだ。  もうどうしようもない、というように振り切れたような抽挿に変わっていく。ベッドが軋んで、マットレスが深く沈みスプリングが悲鳴をあげた。 「ぁ、あ、あ――」  引き摺られるようにして、高みまで昇りつめていく。頂上まで駆けあがり、浮遊感と共に一気に放りだされた。  抱きあったまま知らない場所へと飲みこまれる。 「――っ……」  陽向が射精したのと同時に、相手も陽向の奥で終わりを遂げた。  低く獣のように唸って、身を預けてくる。乱れた前髪がうなじに埋もれた。  よりかかったまま荒く呼吸する相手を受けとめながら、陽向も大きく息を吸いこむ。  身体中、関節が震えるほど疲れ切っていたけれど、心は満たされていた。 「陽向」  掠れた声が耳に落ちてくる。 「……好き。……すげー……好きだよ」  低く響く声音に、胸のうちから熱くあふれてくるものがある。  俺も、という返事は夢の中で囁いているような気がした。

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