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第110話

 上城とふたりでトレーニングをして、そうして一緒にスパーリングをする。軟弱な自分の身体を鍛えて、上城のような男らしい格好よさを目指す。  ――いいかもしれない。  知らなかった強い自分を作ることができるかもしれない。 「やります、俺」  陽向が決意表明をすると、手がのびてきて、マグカップをそっと取りあげられた。上城のカップと床に並べておかれる。  身をよせられ、腕が掴まれて枕に押し倒された。 「一緒にボクシングできるのか」  熱いキスを一回。そうして大切なものを扱うようにして、優しく抱き込まれる。 「それは楽しくなりそうだな」 「……ん」  鼻を鳴らすと、さらにキスを一回。  この人は自分より大人っぽくて、落ち着いている気がしていたけれど、実の所は結構、熱い人なのかもしれない。  目覚めたばかりなのに、また夢の中へ落ちていくような甘い雰囲気に、陽向は目元を蕩かせた。 「誘ってる」 「え?」 「その顔。誘ってる顔だ。けど、自覚ないだろ」  ない。全然。 「まあ、そこがいいんだけどな」  上城は満足げに笑って、またキスをする。  自分の上で微笑むイケメンに、陽向もぼうっとなった。  朝日の当たる部屋で、力強い腕の中に取りこまれながら、ゆっくりと目をとじる。  幸せな気分で、陽向も相手を抱き返した。

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