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第113話
なんでバレてるんですかと、言葉にはできなかったが表情で伝えてしまうと、アキラは訳知り顔でまたうんうんと首を縦に振った。
「最初からわかってましたよ。上城さんが小池さんのこと狙ってるってことは。あの人とは付きあい長いし、なに考えてるか言わなくても大体読めますしね。
しかし、小池さんが落ちてくれるとは予想外でした。上城さん、よっぽど嬉しいらしくって最近は仕事中にもノロケたりしてますよ」
ニヤリと笑う姿から、秘密を暴露する悪戯心が垣間見える。
「……ノロケてるんですか? あの、上城さんが?」
全く想像もつかなくて、バレていたことにも考えが及ばす思わず聞き返してしまう。
「ええ、時々ボソッと呟くように、可愛すぎてムカツクとかこぼしてますよ」
「……そ、それ、ノロケなんですか」
むしろ怒られてるのでは、という気がしなくもない。
陽向がこんがらがった表情をしているのに、アキラが面白そうに笑ってきた。
「上城さんって、見かけによらず恥ずかしがり屋だから。あれでも」
「へえ……」
思いがけない事実を説明されて、陽向は目を瞬かせた。
「だから、照れたときはいっつも不機嫌な顔になるんです。それで隠してるっていうか。で、大抵、怒ってるように見えちゃって損してる」
「そうなんだ……」
そう言えば、と思い返せば、上城と知りあった最初の頃、よく不機嫌な顔をされた。怒らせてしまったのかと焦ったこともあったが、あれはもしかして照れていたのだろうか。
「まあ、長く付きあっていけば、わかるようになるんですけどね」
だから頑張ってくださいね、というように笑ってくるアキラは、上城と陽向のことを受け入れてくれているようだった。
「……はい」
恥ずかしさを誤魔化すように、グラスに口をつける。
「で」
アキラはカウンターから身をのりだすようにして、小声で尋ねてきた。
「小池さんが桐島さんと、なにもないことがわかったから、俺、彼女に堂々とアタックしてもいいですかね?」
陽向の顔を窺いながら訊いてくる。友人である陽向にも了承をきちんと得たいらしかった。もちろん、異論があるわけはない。
「どうぞどうぞ。頑張ってください」
応援したい気持ちはいくらでもあった。アキラには桐島に馬にされた者同士、ぜひとも将になれるように頑張ってもらいたい。
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