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4. 再会(桃李SIDE)
いつもの様に登校すると、教室内が少しだけざわついていた。
どうやら違うクラスに転校生が来たらしい。
男子が残念がり女子が盛り上がっている点から見ると恐らく来たのは男子だろう。
まぁ違うクラスだし別に関係ないかと軽く流していたのだが、2限目の体育の時間でそれは覆された。
「むつ?」
体育館に向かう時にチラリ廊下から盗み見た転校生の顔。
成長し面影は殆どなかったが、雰囲気が似ていた。
何より俺がむつを見間違える筈なんてない。
櫻路と同じ位の背丈に格好良くなった顔。
女子が騒ぐのも理解出来た。
話し掛けたかったが時間も無かったので、取り敢えず体育館へ向かった。
昼休み、櫻路との食事を断り俺はむつの教室に足を向けた。
が、其所にむつは居なく、売店かな?と考えた俺は行き先を変えた。
中庭で歩いていたむつが目に入った。
案の定パン3つとヨーグルトを手にしていた。
久しぶりではおかしいかな?
思い出していない確率の方が高いし。
なら、はじめましてかな?
って、突然意味もなく話し掛けたら変だな。
逢いに来てみたは良いもののどう行動して良いのか分からない。
どうしようか考えている内に近付く距離。
ガン見していたせいで必然的に絡まる視線。
懐かしさと緊張と焦りのせいで赤くなり涙目になる。
ヤバい、俺今絶対変な人だ。
逸らした方が良いのに見たいから逸らせない視線。
「どうした?気分でも悪いのか?」
潤んだ瞳で縋る様に見つめる俺を心配し声を掛けてくれたむつ。
やはり思い出してないが、優しさは変わっていない。
再会の喜びで俺の涙腺は決壊した。
ポロポロポロポロ零れる涙。
人前で泣いたのは久しぶりだ。
止めようと試みると余計溢れる。
「え、ちょっ、ほんっと大丈夫?」
「ごめん。目にゴミが入って」
いやいやいや、大号泣とかどんだけ大きなの入ったんだよ俺。
滅茶苦茶無理な言い訳だ。
足元にパンとヨーグルトを置いたむつは
「大丈夫?痛い?」
俺の顔を覗き込みながらハンカチを差し出してくれた。
そして俺が泣き止む迄側に居てくれた。
「ありがとう。ご飯前なのにごめんな」
「良いよ良いよ。それより目ぇうさぎみたいになったから冷やした方が良いかも」
嗚呼、ほんっと恥ずかしい。
小さな子供みたいに泣きじゃくってしまった。
「……ごめんね……ありがとう……」
赤く染まったままの顔でむつを見上げお礼を口にすると
「ヤバい。メチャクチャ可愛い」
何やら小さく呟かれたが、小声過ぎて聞き取れなかった。
その後何故か自己紹介され、そのまま友達になった。
久々の再会は非常に情けなく恥ずかしい物だったが、再び縁が繋がったのだからある意味大成功だったのかもしれない。
毎日生徒会庶務の櫻路は放課後生徒会室に向かう前に俺に逢いに来る。
そして空き教室か屋上かトイレの個室で沢山キスした後俺にアレを飲ませてくれるのだが、俺は昼休み同様断りむつの方に向かった。
部室に案内する為だ。
ウチの高校は部活に入るのが必修だ。
櫻路は生徒会に入ってから殆ど幽霊部員になってしまったが俺と櫻路は弓道部に入っている。
むつに話すと見学してみたいと言われたので、早速誘ってみた。
ウチの高校はサッカー・野球・テニス・陸上に人気が集中するせいで他の部に人が集まらない。
恐らく貴重な部員確保の為スグにでも勧誘が始まるだろう。
その前に弓道部にと声を掛けた。
折角再会して友達になれたんだ。
どうせなら同じ部活に入りたい。
先輩や顧問に紹介した。
少人数で和気藹々としてるからか部活の雰囲気は良い。
部員のフレンドリーさもあってかむつはそのまま弓道部に入る事にしてくれた。
貴重な部員Getだぜ。
むつの練習は明日からにし、今日は見学をして貰った。
部活終了後一緒に下校したのだが、残念ながら家は近くなかった。
JRの駅迄は一緒に行ったが、違う線だった為其所で別れた。
これから毎日逢える嬉しさに上機嫌に帰宅したのだが
「櫻路?」
櫻路が物凄く不機嫌だった。
夕食時にむつに再会した事を告げると父と母は物凄く喜び、良かったねと言ってくれた。
が、何故か櫻路がご馳走様と席を立った。
殆ど口を付けていない。
いつもは完食するのに珍しい。
心配になり慌てて食べ終えると櫻路の部屋に向かった。
気分でも優れないのだろうか。
大事な弟だ。
何かあってからでは遅い。
コンコンッ、ノックすると
「入るよ?」
俺は櫻路の部屋に入った。
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