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10. 好き(桃李SIDE)
最近の俺は完全にリア充だ。
二度と逢えないと思っていた初恋の相手と再会して紆余曲折あって親友になり、兄弟である爽やか王子な櫻路とも恋人になれた。
幸せ過ぎて調子に乗っていたのが悪かったのか、大変な事態が発生した。
櫻路に運命の番が現れたのだ。
運命の番?
何それ、本当に存在すんの?
地球上に居るαとΩは少ない。
数も同じ数ではないし、年齢も住んでいる所もバラバラだ。
もし万が一居たとしても逢えるとも限らないし、100%結ばれる可能性があるとも言えない。
なので現れるなんて微塵にも思ってなかったのだ。
運命の番は出逢った瞬間に分かるらしい。
櫻路とその相手は目が合った瞬間に気付いた。
その人は嬉しそうに櫻路を自分の王子様だと言った。
その瞬間メチャクチャ羨ましく感じた。
好きだと言われ好きになったが、俺と櫻路は運命の番ではない。
昔俺が捨てたあざと可愛さを全面に押し出し、ガンガン攻めてくるその人は完全に櫻路をロックオンしたらしく、俺を無視して櫻路にアタックを仕掛けてきた。
軽くあしらわれてもめげずに付き纏い、勝手に家の中に迄押し掛けた。
招き入れてもないのに入るなんて、不法侵入じゃね?
余りのしつこさに1日だけ付き合う事になった櫻路。
櫻路が奪われてしまう。
俺のじゃなくなってしまう。
好きだと言われているが、運命の番に勝てる自信なんて全くない。
哀しくて布団の中に引き篭もった。
が、大人しく泣いてるだけじゃ嫌だ。
昔悲劇のヒロインになりきって恋人を失った。
もう二度と同じ間違いは犯さない。
運命は自分で切り開く物だ。
たとえ運命でも俺から櫻路を奪うなんて許さない。
やっと好きだって自覚したんだ。
恋人同士になったんだ。
今更唯の仲の良い兄弟に戻るつもりはない。
洗面所で顔を洗うと
「櫻路を取り返してくる」
父に告げ、家を飛び出した。
格好良く出たものの、何処に居るのかサッパリ分からない。
取り敢えず電話をしてみよう。
掛けたが、マナーモードになっているのか出ない。
映画館や色々な所に行ってみたが、一体何処に居るのかサッパリ分からなかった。
途方に暮れ落胆していたら掛かってきた電話。
櫻路が帰宅したらしい。
なんだ、それなら最初っから家に居れば良かった。
慌てて帰宅すると、やっぱり俺じゃなきゃ嫌だって櫻路に抱き締められた。
父と母に
「桃李を俺に下さい」
頭を下げてくれ後日
「俺と結婚して?」
婚約指輪と共にプロポーズされ、断る人間が何処に居ようか。
「一緒に幸せになろうな?」
泣きながら微笑んだ。
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