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第6話

「俺だけに見せる顔、見せてよ」 体に響くような甘い声で囁く雅先生。 「萌里。好きって言って」 綺麗な顔を歪めて辛そうにしている。 それもそのはず。 雅先生は確実にイくのを我慢している。 僕が好きって言うまでの我慢。 でも僕は告げる代わりに口付けを落とす。 僕達の間のアイの銀の糸。 でもそこに愛は無い。 辛そうな、泣きそうな先生の顔が間近にある。 きっと、好きと伝えるだけですごく嬉しそうな声を上げるのだろうと思う。 僕の大好きな笑顔で。 でも、僕はもう恋なんて出来ないから。 王子にフラレて、辛い気持ちを理由に、同情した先生を利用した最低な奴だから。 だから僕は最後まで最低な奴でい続けるよ。 「じゃあね、先生。今日も良かった」 そう言って事後立ち去る僕の耳にいつも聞こえる鈍い音。 それが雅先生が壁を殴っている音だと気づいたのはいつからだろうか。

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