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第10話

「何で泣いてんの?言ってくんなきゃわかんないー」 保健室の処置するための椅子に座った先生の上に座らされている。 「好き」 「……え?」 これぞ鳩が豆鉄砲食らった様子。 先生は目を丸くした。 「今何て…?」 そりゃあ、今まで僕は絶対に言わなかったことを言ったのだ。何度言えと言われても言わずにいた『愛』の言葉。 でもそれは先生と一緒に居るためだったのだ。 「雅先生が、好きなの…」 「......本気にしてもいい?」 先生が僕の顔を見ようと自分の体から引き離そうとしても抱きついたまま離れない。 「離れたくない。誰も…抱かないで」 「萌里……」 0㍉の距離を保ったまま、見上げた先の先生は困った顔で笑っていた。 一年前のあの笑顔だ。 しかたなく頷く様な、あの表情。しょうがないとでもいう様に眉を下げて。 「ごめん...なさい...」 「なんで?俺も、好きだよ?でもさ」 もし好きなんだとしたら、どうしてそんな顔するの? でもなんて、要らない。 「やめて、それだけは......」 もう聞きたくない。 「俺たち、生徒とセンセーなんだよ」 一年前と同じセリフを雅先生は辛そうに吐き出した。

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