3 / 6
第3話 兄と名乗る青年
後ろから聞きなれない声がした。
僕より低い声の主を見ると、華のあるイケメンの青年が立っていた。
「えっ、……誰?」
見たことのない青年を見ていると、どこかで見覚えのある人だった。
「何言ってるんだ冬馬。お前の兄ちゃんの椿だよ」
僕に兄さんなんていない。
それでも何か懐かしい気がした。
会いたい気もしていた。
そんな不思議な気分だったけれど、それでも僕には兄さんなんていないから。
「貴方は誰?」
するとそのイケメンは残念そうに溜め息をついてしゃがみこんだ。
「あーあ。とうとう今年でおしまいなんだな、兄弟ごっこ。その為だけに俺は一年間楽しみにしてきたのに」
「あの。僕理解が出来ないんだけど……」
すると『椿』と名乗る青年は立ち上がり、僕の身体を軽々と抱き抱えた。
「ちょっと、なにするんだよっ」
「病人が騒がない。……母さんも安静にって言ってただろ」
そう、僕は病人で。
言われたらなんだか身体が重くて怠いし熱い。
僕は渋々『椿』の腕の中で大人しくすることにした。
「説明は冬馬が飯食って、薬飲んで、ベッドに入ったら話すから。ただ俺は冬馬が心配なんだ」
この人はどうやら悪人ではないみたいだ。
なら僕の面倒を診てもらうことにしよう。
だって僕を心配してくれているみたいだったから。
それに僕はとても寂しかったから、そうしてほしかった。
ともだちにシェアしよう!