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第3話 兄と名乗る青年

後ろから聞きなれない声がした。 僕より低い声の主を見ると、華のあるイケメンの青年が立っていた。 「えっ、……誰?」 見たことのない青年を見ていると、どこかで見覚えのある人だった。 「何言ってるんだ冬馬。お前の兄ちゃんの椿だよ」 僕に兄さんなんていない。 それでも何か懐かしい気がした。 会いたい気もしていた。 そんな不思議な気分だったけれど、それでも僕には兄さんなんていないから。 「貴方は誰?」 するとそのイケメンは残念そうに溜め息をついてしゃがみこんだ。 「あーあ。とうとう今年でおしまいなんだな、兄弟ごっこ。その為だけに俺は一年間楽しみにしてきたのに」 「あの。僕理解が出来ないんだけど……」 すると『椿』と名乗る青年は立ち上がり、僕の身体を軽々と抱き抱えた。 「ちょっと、なにするんだよっ」 「病人が騒がない。……母さんも安静にって言ってただろ」 そう、僕は病人で。 言われたらなんだか身体が重くて怠いし熱い。 僕は渋々『椿』の腕の中で大人しくすることにした。 「説明は冬馬が飯食って、薬飲んで、ベッドに入ったら話すから。ただ俺は冬馬が心配なんだ」 この人はどうやら悪人ではないみたいだ。 なら僕の面倒を診てもらうことにしよう。 だって僕を心配してくれているみたいだったから。 それに僕はとても寂しかったから、そうしてほしかった。

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