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事実

 「あ、アヘン・・・?」  「これは相当にマズイよ、村上君」  錦田教授はゆっくりと俺を見た。そして眉間に皺を寄せそう言った。  母が最後まで訳さなかったのは、アヘンに関与する祖先の行動を証明する事になってしまうからだったのだろう。そして、錦田教授もまた・・・・。  浦島が葱坊主だと思っていた植物は芥子の実であった。  芥子は花を落とすと、葱坊主のように丸い実を作る。  ぷっくり膨れた芥子の実に傷をつけて一晩放置すると、白い汁が出るのだが、その汁を乾燥させた塊が、アヘンなのだ。  アヘンは、芥子の果実からとれる、「麻薬」だ。あのモルヒネを主成分とする有機化合物が含まれている。痛みを和らげたり、催眠効果や恍惚感や陶酔感をもたらす効果があるとされ、強い中毒性もある。  「浦島は最初、アヘンを経口摂取させられていた、それは、火で炙ったアヘンよりいくらか効果は薄い。ただ、浦島の記録を訳すると、浦島は徐々に喫煙によるアヘンによる中毒になったようだ。今後メモを残すのは危険だし、あの蔵に貯蔵されたアヘンもかなりの量だ」  錦田教授は目を閉じて考え込んだ。  そして、俺の疑問は他のところにもある。  なぜ浦島は身投げ未遂をしてから、何百年も生きたのか・・・・。  「教授・・・浦島の記録をもっと読んでみたいんです、引き続き訳してくださいませんか」  俺の問いに、錦田教授は静かに頷いた。  「村上君、この話は我々だけで処理出来る話ではない、少し大きな機関に相談してみないか?どうだろう」  俺はかなり迷った。しかし、錦田教授と俺の二人だけでこの真実を受け止めることは出来ないとも判断できた。  「教授、もう少し記録を読み解いてから、大きな機関へ頼る道を選んでもいいでしょうか?」  俺の判断には、錦田教授も賛同してくれた。そしてまた、蔵通いが始まった。

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