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第3話

  「ソレで、虎とは上手くいったの?」 青年は肩口だけをシャツから出してご機嫌な少年に訊ねる。 「ああ、もう無断で何日もお前をオレのところに寄越さなくなっただろう?」 胸焼けも治ったし、頗る気持ちよくさせて貰ってるぞとニタニタ笑う少年は、本当に機嫌がイイらしい。 「だけどさ、俺と一線を越えたって話は早く取り消した方がイイんじゃない?」 「ん?チューはしたんだから、間違ってはいねぇだろう?」 「ソレはそうだけど、毎回、身体検査をされる俺の身にもなってよ?」 青年は溜め息をついて、貞操帯を着けさせられていることを少年に打ち明ける。少年は「なんだ、オレとお揃いじゃないか?」と軽く笑って迷惑を被っていることに気が付いていない。 「連華、頼むからそう楽観的に言わないでくれるかな?俺、コレじゃ好きな子が出来ても手が出せれないんだよ?」 「ん?イイじゃねぇか?どうせ、オレ以外に勃たねぇんじゃ意味ねぇだろう?」 少年は青年の肩口から顔だけを上げて事実をたんたんと語るが、青年は面白くない。 「他人事だと思って。確かにそうだけど、俺にも自由が欲しいよ?」 「そう言われても、オレにはどうしようも出来ねぇだろう?」 眷属をクビした吸血鬼何て聞いたことがねぇぞと鼻で笑う。 「なら、俺にもその眷属を作れるような力とかないの?」 「んな力があったら、お前よりも先に虎のヤツが使っているだろうよ」 アイツ、オレだけだって言いながら色んな穴に突っ込んでいるだろう?などと、見てきたような言い種で言い退けて青年を慰める。 「何?その不憫な子目線。俺、ヤだよ。そう言う痛いの?」 「痛いって言われても、オレもお前も痛いんだから仕方ねぇだろう?堕ちちまったモンは仕方ねぇって諦めろ」 「連華、諦め早すぎ。もっとこう活力上げてドンと押してよ?」 「押すって言ってもどう押すんだよ?気持ちイイを越えたら、オレ、昇天しちまうよ?」 「えー、ソレってもう放棄じゃん。もっと俺にも優しくしてよ」 「優しくって、狛よ。そんなにオレに骨抜きにされたいワケ?リアルに怖いぞ?」 少年はご馳走さまと青年の肩口を舌で舐めて青年から離れる。出来るだけシャツを汚さないように気を使うのは有り難いが、青年からしたら生理的現象が起きて苦労していた。 「ハア、もう骨抜きだよ。何でこうも鈍感なんの?」 「鈍感って何だよ。ひでーな?オレ、アイツよりかはマシだと思ってるぞ?」 「確かに、そうだと思うけどさ。虎の場合、鈍感以前の問題だと思うよ?」 「ま、アレは周りが指摘しねぇ限りアイツは気が付かねぇな………」 「じゃ、連華から言ってみてよ?」 膨らんだ下半身に食い込む貞操帯が憎らしいと言う感じで、青年の言葉が荒々しい。 「別にイイが、お前はソレでイイのかよ?虎のことだから、徹底的に白黒付けるぞ?」 少年は背凭れに凭れ、青年を脅すようなことを言う。確かに、もう片方の青年はそう言うけじめは付けたがる方だからそうだが、この青年と言えばソコまではしたがらない。口論になった場合、引くのは彼の方だ。 「歩合はそうだけど、そうならないように頑張るからさ。ね、お願い♪」 拝むようにねだられると少年は大きく息を吐き出した。 「仕方ねぇな。オレはどうなっても知らねぇからな?」 少年はこの青年にも甘いようで、渋々請け負うが責任は取らないと言い切る。双子の相違など普通のことだが、この青年らは少しはがり事情があってそうではなかった。 「ヤッター、ありがとう」 少年の両手を掴んでブンブン振り廻すが、少年は嬉しくはない。コレがもう片方の青年だったら、話は別なんだろうが。 やるせなさからまた溜め息が漏れる。 「ハア、なんでこうも性格が違うんだか不思議で仕方がねぇわ」 同じ個体でもこうも違えば確かにそう感じるのも仕方がない。が、別個にある同じ個体を同じモノだと言い張るのも可笑しなことである。  

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