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第4話
「ハア?何、言ってんだ?お前、頭がおかしくなっちまったのか?」
青年は少年の額に手を当てて、熱を測るように唸っている。少年の方はほら見ろ的な視線で青年の顔を見上げた。
「オレは真実を言ったまでだって。お前が信じなければソレでイイし、信じるならそうだと認識するべきだって言ってんだ」
「何だよ、ソレ。狛のヤツがそう言えって言ったのか?」
青年は少年の腕を掴んで抱き上げる。慰めて欲しいのかと思った少年は口早に応じた。
「ああ、頼まれただけだ。慰撫するまで頼まれてねぇって。ちょ、離せよ」
「厭だ、離さない」
青年は少年を抱き上げたまま廊下の扉まで移動する。ドアノブを廻そうとして、少年が急に慌て出した。
「お前、今から狛に逢うつもりかよ?」
「当たり前だ。そんな、阿呆な話があって堪るかって」
直接文句を言わないと気が済まないと言う猛進型は本当に厄介だ。
「だったら、お前一人でいけばイイだろう?何でオレまでいかねぇといけねぇんだ?」
「そりゃ決まってるだろう?狛のヤツにイイように言いくるめられたらどうすんだよ?」
青年らしくない台詞に少年が呆れる。
「ソレって、もううやむやにしたいって顕れじゃねぇの?怖いんなら聞くなよ?」
「だからって、ハイそうですか?って素直に引き下がれないだろう?」
「ソコは素直に引き下がれよ。誰もお前がそうだって言っても解んねぇよ」
少年は青年の肩口を叩いて降ろせと暴れる。
「お前な、ココで降ろして困るのお前の方だろう?俺が帰ってこなかったらどうすんだ?」
「んなこと、お前には関係ねぇだろう?一日くらい床で寝たって平気だ」
一人で立てない少年には誰かに移動させて貰うしか移動手段がないのだ。
「阿呆か、そんなこと出来ないって。直ぐ風邪引くくせに強がるなよ?」
「強がってねぇ。風邪ウイルスがオレより強いだけだ」
「ハイハイ、そうだな」
少年はコレでもかと暴れるが、少年の力では歴然の差。ポカポカと叩かれたとしても、痛くも痒くもない。
扉を開いて青年は廊下を歩き出す。この時間帯なら厨房にいるだろうともう片方の青年の部屋を通り越して、厨房に向かった。
「ところでさ、連華、お前はどうなんだ?」
「どうって、知るかよ。お前らの相違なんてハナっから眼中にねぇって」
しつこく叩き続ける少年の手が真っ赤になっていた。鬱血しているらしく段々と青紫色に変色している。
「ソレって、俺だけが知らなかったってことに聞こえるんだけど?」
「そりゃそうだ。お前だけが知らなかったんだからさ」
少年は悪(わろ)びることもなくすぱんと切り返した。青年はポカポカと叩くその手首を掴んでその細い腕に唇を押し当てる。フッと仰け反るように背筋を伸ばす少年はどこもかしこも性感帯になっているようだ。
「………んっ、ナッめんな………」
「じゃ、叩かないで。お前を痛くさせるのは俺だけで十分だろう?」
熱い舌を這わされて少年が悲鳴を上げる。ソレだけで簡単にイってしまったのか、ぐったりと倒れ込むように青年に身体を預けた。
「ホント、身体だけは素直だね。もっと醜い姿を醸しても俺はお前を捨てないよ?」
「………う、るしゃい………、オレりゃって………すきで………こんにゃせいきゃく、じてにゃい」
九百年間積み重ねられたモノはそう簡単には崩れないと泣き言を言う少年は可愛い。青年もそう思っているらしく、「んじゃ、少しずつ崩そうか?」と愉快に笑ってもう一度、少年の手首に唇を落とした。
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