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第5話
「虎?何、やってんの?」
厨房に入った頃には少年はもう出来上がってしまったらしく、ぐずぐずと虎と言う青年に「早く挿れて」とせがんでいた。
呆れた口調で狛と言う青年が虎を見る。
「そんな顔すんなよ、狛」
「じゃ、嫌がらせ?青姦なら他でヤってよ」
事情を知らない狛としては腹立たしいことこの上ない。
「だから、そう言うんじゃなくって、俺はお前に話が………」
あってきたんだと言い、少年は付属品だと少年のことを指差して言い張る。
狛は心底呆れた。何処の世界に性欲駄々漏れでにたうち廻っている阿波ずれを付属品だと言うんだ、と。タダの嫌みだと白い目で見た。
「違うって。ちょっとした成り行きでこうなっちまっただけだって」
「さあ、どうだか?」
信用していない狛は虎から少年に視線を移すと可哀想にと、少年を憐れんだ。少年はちっとも自分の方に視線を向けてくれないのが不服なのか、二人の視線の間に入ろうとした。
「………とりゃ、………らめ、………オレじゃけみゅて………」
「ああ、コレは完全に堕ちてるね?」
狛の目の前だと言うのに少年は虎の唇を小さな唇で奪う。でろでろと舌まで挿れて、どうにか自分に興味を持って貰おうと必死だった。
「………んっ、コラッ、後で好きなだけ啼かしてやるから、今は待ってろ」
少年の身体を引き離し、コレでは狛と話が出来ないと踏んだ虎は近場にあった椅子に少年を座らせた。ココにくるまでに軽く五回はイっている少年は身体を支えきれず、背凭れに寄り添うように凭れるがずるずると身体が床の方にずり落ちていく。慌てて虎が身体を支えると、少年は大きく身体を奮わせた。
「あ、もしかして、イっちゃった?」
狛が心配そうに覗き込むと虚ろな瞳でコクコクと頷く。もう身体が疼いて仕方がないと言う風情で虎の身体にしがみ付く。
「コレは流石にキツそうだね。虎、先に楽にしてあげたら?」
「ソレは、無理。コイツの精力は絶倫だからそんじゃそこらじゃ満足してくれないの」
お前との話の方が先に終わるなどとけったいなことを言う。口論になったら、数時間は平行線だ。先に根を上げて折れるのが狛だが、今回はそう簡単に折れてはくれないと解って言っているのだろうか?
「でも、虎、今回は俺も折れる気はないから長期戦になるよ?ソレでも、構わない?」
狛の言葉に虎が眉を潜める。
「狛、そんなにその立ち位置を俺に奪われたくないのか?」
「解ってないね、虎。奪われるとかそう言う次元の話じゃないんだよ」
俺とお前が同じ個体でも中身が違うだろう?ソレと同じだと狛は言う。
「だったら、何で俺に言った?俺が白黒付けたがることくらい解ってるだろう?」
「だけど、何時までもこう言う状態は可笑しいだろう?俺にも自由が欲しい」
タダ、ソレだけだよ。他は何も望まない。だから、連華に頼んだ。ソレだけ。
狛の言い分はもっともだ。縛っておく方は気が楽かもしれない。が、縛られている方は気が気ではなかった。
「狛、ソレでも俺は連華の手を離すつもりはないぞ?」
「当たり前だろう?俺はお前の手から俺の手を離せって言ってんの?解る?」
もう六歳の兄の面倒は見切れないと狛は手を上げて、コレからは同等にいこうと言う。
「ハア?何の話だ?」
「何の話って、俺の立ち位置の話だろう?何で虎、閏年生まれなの?俺、弟なのに虎の面倒を見ないといけないんだよ?」
狛は納得がいかないと怒り出すが、虎は更にちんぷんかんぷんだ。
「何だよ、ソレ?連華が誰のモンだって話じゃないのかよ?」
「な、そんな話までしたの?」
「してないけど、俺とお前の立ち位置がどうこうって言ったらソレしかないだろう?俺、お前を縛った覚えないし」
「縛ってるだろう?俺が何するにも監視ばかりして」
「当たり前だ。お前、何時抜け駆けするか解らないだろう?」
「ソレ、ソレを止めて欲しいの。幾ら連華を好きでも虎みたいに強引にしないから」
狛はそう言って、しまったと口を塞ぐ。
「な、ソレ、どう言う意味?俺にも詳しく教えてくれない?」
ニコニコと笑う虎だが、目だけはまったく笑っていなかった。
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