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やっと気づきました

 「ねえ聞いた?榊原君の…」  「聞いた!暴力団に関わってたってホントだったんだ…」  「マジ?じゃあ他の組?の人とかに襲われたの?」  「わかんない。でも頭縫ったんだってよ」  「うっわ、ヤバ…」  「でもそんな感じしてたよね」  「わかる!お家がスゴイ…ね」  「そうそう、いかにもって感じ!でも、怜央君は…?」  「その時いなかったらしいよ?珍しくない?あの二人がくっついてないときなんてないと思ってた」  「それな!めっちゃわかる、しんどい」  「王子様と騎士でしょ完全」  「やっば、完璧そうだよ」  「うわ〜、榊原君いたら女子、怜央君に近づけないじゃん」  「そんなことしたらマジで殺されるって。埋められるよ?」  「え〜〜埋められたい〜!!」    下駄箱でキャーキャー話してる女子達。焔緋はそんなのと関わってません。デマです。上履き履いたんなら早くどけよ…少し先から見てても気づきやしない。他の生徒たちも迷惑そうにしてる。あーも〜…  「おはよ」  「ひぇっ!?お、はよう!!」  「そこ、僕の靴箱なんだけど…」  一人の女子の真上の靴箱を指差す。  「へっ?あっ、ごめんね!!」  そう僕の顔を見るなり慌てて駆けていく。別にそんな怒ったつもりは…と上履きに履き替えていると、よっ!と声をかけられた。  「おっは、れおっち」  「おはよ、(アラタ)」  教室に向かいながら話し出す。  「アイツ、だいじょぶだの?」  だの?って…改はたまによく分かんない造語?自分の言葉を使う。だからツッコミたくてもツッコめない。  「大丈夫だよ。手の生命線だけは長いから」  「だけかよw あ、そーいやさ」  「ん?」  ガラッと教室のドアを開ける。その途端、クラスの雰囲気が凍りついた。ていうか時が止まった。廊下まで話し声が聞こえてたくらいなのに、なんで僕達が入ってきたらとまるんだよ…  コソコソと内緒話をする女子、アイツやべえな関わんとこ感を醸し出す男子。  うわぁ何で僕まで巻き込まれてる感じだの?(改風)噂ってこわい。  「おっす」  その雰囲気の中、唯一僕に声をかけてくれる煌羅(キラ)。内心ホッとしつつ、自分の席に座る。  「おはよ、煌羅」  「おっはー」  「あ、で?さっきのつづきは?改」  なになに?なんの話?と、煌羅も身を乗り出してくる。  「ん?あー、何かさ、昨日知らん男らに話しかけられたんよ」  ドクンと胸がざわめく。  「マジ?ケンカ売られたん?」  「売られても買わねぇよお前ん家じゃないしw ん〜と、背ぇ高くて、黒い服着てたな。三人いたわ。一人はとりまデカかった。で、話のないよーがさ、れおっちのことだったわけ」  だからいちおーれおっちに言っとこうと思って。  血の気がサアっと引く。三人?捕まったのは二人。だとするとあとの一人はまだ…  「で、なんて言ってたの?」  「怜央・ウィリアムズを知ってる?どこにいるか分かる?的なこと。何で?って聞いたら知らねーならいいってどっか行った」  ほら、プライバシー大事じゃん?とケラケラ笑う。  あと一人はまだ…僕を探してる?  「どしたん。顔色悪くね?」  まあいつも白いけどな、と煌羅が僕のほっぺたをつねる。いてーよこのやろ、、、  「もしかしたら…焔緋を襲ったのそいつらかも…」  「「はっ?」」  「分かんないけど…」  「や、でも犯人捕まったんだろ?」  「捕まったのは二人だって言ってた」    「だとすると…」  「うん…」  「「あと一人はまだれおっちを探してる?」」  二人は顔を見合わせてハモる。似てるね、二人とも。  「そーゆーこと」  「それヤバくねぇ?サカキがこん中で一番喧嘩つえーのにアイツやられたら終わりじゃね?」  「なに、お前そいつらと喧嘩するつもり?」  「え?しねーの?」  「しないよバカ。焔緋の二の舞いになってどうすんの」  改の頭をパコンと教科書で殴る。たとえ来夢が協力してくれたとしても、勝てるとは限らない。  「んー、じゃあオレのにーちゃん呼ぶ?」  「お、それいけんじゃね?」  「それはちょっと…」  煌羅のお兄さんは俗に言う番長。ここらへん一帯のヤンキーを束ねてるらしい。会ったことは一回しかないけど、いかにも強そうなオーラが漂ってた。煌羅も強いから、兄弟揃って喧嘩する毎日だって言ってたな。  さすがにそれやっちゃうと人間にとっても吸血鬼にとっても悪影響しかない。今まで保ってた均衡が崩れる。  「そんな事しなくていいよ、ケンカもなし!とりあえず話しかけられても知らないって言ってくれればいいから。絶対に反応しないでね」  しゃーねぇなぁ、と言いながらも頷いてくれる煌羅と改。    「お坊っちゃん、何かあったらいえよ?ぶっ潰してやっからよ」  「僕のことナメすぎ。でもありがと」  まだ心配そうな二人に席に戻るように言う。  1時間目、数学。  いつもはずっと寝てる焔緋の座る、斜め前の席は空っぽで、ちょっとだけ寂しい。    「はぁ…」  そんな事考えてる場合じゃない。  ルーズリーフを一枚机に出して、今までの疑問を記す。  ・何で焔緋が襲われたのか  ・まだ分からないが相手は三人。二人は捕まった。  ・どうして僕のことを嗅ぎまわっている?    僕の家は結界が張ってあるから家の中は安全、だけど一人は少しだけ危険。お祖母ちゃんのペンダントがなければ、簡単に襲われる。ペンダントはいつも首にかけてはいるけど、取っちゃえばなんてことない。(僕にとってはだめだけど)それがどうして焔緋に______  あ。  あーーーーー!!!!!!      『オレが全部飲んであげる』  そうだった…あいつ…僕の血を飲んだんだ…

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