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お見舞い
焔緋 side
「あー、怜央ちゃんまだかなぁぁいでっ」
もうすっかり良くなった身体をゴロゴロする。でもたまにズキッと頭やら体の切り傷やらが痛んでとまる。
「そんな早く来るわけなかろう。怪我人は黙って寝てろ」
はぁ、とわざとらしいため息をつくクソ兄貴。こいつ、絶対怜央ちゃんが来るって知ったから来やがったな畜生。何が『弟の心配して何が悪い?』だバーカ。時計何回も見てるの知ってんだかんな。
「うっせぇな、お前は怜央ちゃんが来る前にさっさと帰れ」
シッシッと手で払うマネをすると、ギロリと睨む。全然怖くねーから。
「おまえは…!!もう少し口の利き方を学んだ方が良いんじゃないのか!」
「怪我人に怒鳴んなよ!余計に頭痛えっつーの」
「なんだと!?」
「やんのか!?」
両者互いににらめっこしていると、病室のドアが開いた。おずおずと顔を覗かせる俺の大好きな人。
「コ、コンニチワぁ…」
「怜央ちゃーーーーん!!待ってたよー!!」
早くこっち来てとおいでおいですると、兄貴に「こんにちは、庵さん」と挨拶してから目の前まで来てくれる。こんなのに挨拶なんていいんだよ、律儀なんだから。そんなとこも好き。
「アイツ放っといていいからね、怜央」
「そんな訳にいかないだろ。庵さん、これ、お菓子です。庵さんが好きだって言ってたの貰ったのでどうぞ」
「本当か?すまんな、ありがとう」
紙袋の中身を覗いた兄貴は心底嬉しそうな顔をする。ムカつく…ドヤ顔でこっち見んな
「後でご馳走する」
「いえ、大丈夫ですよ」
「そーそー、俺がお礼するからいーよ」
またギロッと睨まれる。
「焔緋、やめなってば…」
兄貴と俺を交互に見てあわあわする怜央ちゃん。可愛い、まじで天使。
「怜央がキスしてくれんならやめるよ?」
「なっ!」
頬を染めて怒る。可愛い。
「貴様…」
兄貴はグルル…とでっけー犬みたいな顔してさ、ウケるんだけど。
「ほらほら、怪我人に喧嘩はダメじゃん?」
ほらほら〜と煽ると、怜央ちゃんは「ほんとバカ…」とため息をついて、俺の左手にキスした。
「も、これでいいだろ」
「ありがと。はい、終わり♡ね?」
ふふん、と兄貴を見ると、ショックを受けたような顔してる。殺気が漏れてるよぉw と内心優越感に浸っていると、怜央ちゃんが兄貴に近づいた。
「あ、あの…庵さん、今時間ありますか?」
ショック状態だった兄貴はハッとして時計を見る。
「あ?ああ…あと30分位なら」
「ちょっと相談いいですか…?」
「別にいいが」
「焔緋、ちょっと待ってて」
ドアに向かう怜央ちゃんにストップをかける。ちょ、おかしくない?俺に話せなくて兄貴に話せる相談ってなに??浮気?浮気なの怜央?
「は?ここで話せばいーじゃん」
「口挟むからヤダ。いい子で待ってて」
いかにもイヤそうな怜央ちゃんにショックを受ける。ひどくない?黙ってって言われれば黙ってるよ俺。
「…早く戻ってきてね」
「うん」
怜央ちゃんに続いて病室を出ていく兄貴が俺に向かってニヤリとしたのは間違いない。
怜央ちゃんにもらったお菓子食ったろか?
何話してるんだろ…気になってしょーがない。
「チっ」
グルグル思考が曲がり始めて絡まる。
後で聞き出してやる、と内心兄貴に対抗心を燃やす。そのやる気を手持ち無沙汰できょろきょろすると、怜央ちゃんが持ってきてくれた学校の課題を引っ張り出して解き始めた。
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