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反抗期
怜央 side
「ん…」
頭が温かい何かに包まれている。でも腕のあたりが冷たい。暖かくなりたくて僕を包んでいるものに手を伸ばして抱きしめた。
「…ん?」
この手触りは布か?布越しにでもわかる固くて温かい体温。もう少し上の方へ手を伸ばすと、サラサラした髪が触れた。この髪、知ってる。
「怜央ちゃん、起きて」
「ほ、焔緋…」
「お、怜央ちゃん起きた?」
温かい焔緋の身体が離れて、揺すられる。ゆっくりと目を開けると、眩しい日差しと共に焔緋の顔が見えた。
思わず赤面する。まさか、自分から焔緋を抱きしめるなんてありえない。
「もうお昼だよ、怜央ちゃん。もう給食終わっちゃったかな。もうサボって何か食べに行こ!寝たらお腹減った〜」
「う、うん…」
くあーっと欠伸をする焔緋を横目に、体を起こす。気づかれてない…?よね。良かった。
ズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。時刻はとっくに一時を廻っていて、それを見たらお腹が鳴った。
「僕もお腹減った…財布持ってる?」
自分の尻ポケットに財布があるか確認する。うん、ちゃんとある。焔緋も頭を掻きながらスマホを覗いている。
「持ってるよ〜、どこ食べに行く?」
焔緋もカーディガンのポケットから財布を見せる。よし、カバンは置いてこ。
「ん〜…、たこ焼き食べたい」
「いいね!行こー!」
ガチャリと屋上のドアを開けて、廊下に誰もいないのを確認する。いや、めっちゃいました。はい。体育の授業へ行くのか、体操服の人達が楽しそうに話しながら歩いていく。それに紛れて昇降口へと足を進める。先生に見つかったらダルいからね〜
僕達に向かってヒソヒソと話す人たちがいたけど、気にしない。前までは気にしてたけど、もうメンドーになった。バカにされるのも、真面目にしてんのも、期待されんのも。
そう頭の中で呟きながら、焔緋と一緒に靴に履き替えて校門を出ようとした時、スマートフォンの着信音が鳴った。
「LIME?誰?」
脇から覗く焔緋と一緒に、LIMEのメッセージを開く。
『今日は学校サボっちゃだめよ?』
「母さん…」
「oh…( ◠‿◠ )」
流石僕の母さん。今からサボろうとするときにちゃんと送ってくれるんだ!母親として完璧〜!
困ったような焔緋と顔を見合わせる。
「どーしよっか。怜央ちゃん」
「…はぁ」
頭を掻いてたぷたぷと返信を送る。
『ごめん』
「…いつもサボってる訳じゃないし…行こう」
「珍しい!」
いつもは言うこと聞くのに〜!ってびっくりした焔緋の顔。別に珍しいとかそういう事じゃなくて…ま、いいか。
「じゃ、行こ」
「うん!」
焔緋を隣に置いて、僕達は田舎の田んぼを横目に歩き始めた。
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