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依頼人の正体?

「あ……いい……そこ……い、いく……」 「ほら、いいだろ? ここをこうすると、もっとよくなる」 さっきまでの威勢はどこかに消え、おっさんは自ら腰を振り始めた。 これが即堕ち? タローも、まるで恋人に対するように愛情に満ちた動作でおっさんに応える。 そうこうしているうちに、おっさんの余裕のない叫びが響いた。 「あーー、いく、いくーーー」 タローは、おっさんを抱きしめるように律動を早めた。 「いい…いい……いく、いく!!」 「一緒にいくぞ、タイミングあわせろ」 「あーーーーー」 ひと際、高いおっさんの声があがり、律動は止まった。 辺りに、静寂が戻る。 「これが、セックスだ。こうやって、相手を慈しみながら二人で快楽の階段を昇るんだ」 タローは、例の腰にくる官能的な声で告げ、ベッドから身を起こした。 なんだ? これ? 今回のこれは強姦というより、まるでセックスのレッスン。 「……んっ……こ、こんなに満たされて、気持ちがいいセックスは初めてだ……ワシのやってきたセックスは、何だったんだ……」 おっさんは息も絶え絶えに、ベッドに俯せになったまま頭を抱えた。 「今からでも遅くない。あんたにもいるだろ? あんたのことだけを愛して待っていてくれる人が……」 「くぅ……」 おっさんの肩が震える。 タローは、ベッドの端で座り込んでいる俺をチラリと横目でみるとクスリと微笑んだ。 クソっ! 俺は、体を屈めた。 タローに比べるとまるで子供のようなペニスは、ギンギンに反り上がっていた。 おっさんに入れられた媚薬が、今頃、効いてきたのだ。 粘膜を刺激する掻痒感に、居てもたってもいられない。 「俺のこれで、その体を鎮めてやろうか? 最高にメロメロにして天国を見せてやるぜ」 そう言いながら、自分の立派なイチモツを前に突きだした。 たった今、一戦目が終わったばかりだと言うのに、もう臨戦態勢。 この疼きを散らすには、ものすごく不本意だけどタローにお願いするしかないのだろうか? メロメロの天国って……そんなものを知ったら、どうなっちゃうんだろ? 「だーめー」 そういいながら、部屋に入ってきたユウジが俺を抱き上げた。 口調はいつものおチャラけたものなのに、まるで怒っているように表情が硬い。 猿ぐつわを手早く外す。 「ほら、さっさと行くぞ?」 おっさんを残し、ユウジは俺を抱きかかえたまま、急ぎ足で部屋を出た。 タローは片眉をあげ、首を捻りながら後に続く。 「うわっ」 不安定な態勢に、思わずユウジの首にしがみついた。 あれ? いい体してるじゃん? 普段のチャラい外見で気付かなかったが、ユウジもタローに負けず劣らず、ほどよく筋肉に覆われた体をしている。 これは、ちゃんと鍛えられた体だ。 密着したせいで、挟まれたペニスにダイレクトにユウジの振動が伝わる。 「あっ……んっ」 不意に喘声が口から漏れ出た。 慌てて奥歯を噛みしめる。 やばい!!! でる、でるっ!! 我慢大会、再び。 今度は尿意じゃなく、射精。 ……こんなのばっかり。 刺激を与えたくないのに、俺の意思を裏切り、腰が勝手に動き始める。 床オナするみたいに、ユウジの腹筋に擦り付けてしまう。 それがまた、ヤバいほど、気持ちいい。 帰ってこいっ!! 俺の理性。 快楽に負けるなっ!! 「んっ」 ダメだ。 桃源郷がすぐそこにある。 本当にすぐそこ。 ほんの少し昇ったところに、ほら…… 「あーーー」 ちょうど、建物から出て、車に乗り込もうとした瞬間。 ユウジが身をかがめた拍子に、俺のそこが強く引きつれた。 その刺激に、一気に、昇りたくもない階段を昇りつめる。 そして…… 俺は、ユウジの腹に吐精した。 「もう、ヤダ……」 涙腺が崩壊し、堪えていた涙が次から次へと溢れ出る。 今日1日、散々だ。 行きの車の中では、おしっこをもらし、 部屋の中では、おっさんのペニスを挿入され、 そして、帰りの車で射精した。 普通では経験しない、みっともないことばかり。 しかも、腹立たしいのは、射精したというのに俺のそこは元気なまま。 萎える気配は、全くない。 恐るべし、媚薬の効果。 もう、死にたい。 「大丈夫だよ?」 ユウジの俺を抱きしめる手に力がこもる。 「なんだよっ! た、他人事だと思って!! 俺、初めては本当に大好きな人とって決めてたのに……大事にしてたのに……あんなおっさんと……」 「先っぽだけだし大丈夫。 お前は、まだ、まっさらな子だよ? 汚されていない」 「そんな、口からでまかせ!」 「本当だよ? 俺が保証するって!」 あんたの保証なんて、何の価値もない!! 大声で怒鳴ろうとした俺を、ユウジはギュッと抱き締めた。 身動きできないほどの強さ。 その強さに反論する気が削がれる。 「ごめんな。守ってやれなくてゴメン。こうして、抱っこしててやるから。ずっとお前のそばにいるから。ゴメン」 頭上で繰り返される真摯な言葉に、何故かますます涙があふれでて、胸がキリキリと締め上げられる。 そこに混じる甘い痛みに気づかないフリをして、俺は目を閉じた。 いつの間にか寝ていたようで気づいたら、いつものベッドの上だった。 お世話係として過ごした山奥の屋敷の自分の部屋。 このまま、家に帰ってやる! これ以上、お世話係の仕事はムリ。 それに、俺はあのおっさんをおびき寄せるためだけに仕込みとして雇われたのだ。 その仕事が終わった今、もう不要なはず。 俺は、身の回りのモノをまとめると、そっと家を出た。 別れの挨拶をすべきか迷ったけど、どんな顔をすればいいかわからないしやめておく。 ヒッチハイクやバス、電車を乗り継ぎ、やっとの思いで自分のアパートに戻る。 すっかり、日が暮れていた。 「腹減った」 思えば、昨日の朝から何も食べていない。 コンビニでも行くか。 アパートを出たところで、見覚えのある姿を見付ける。 ユウジだ。 毛先だけ金髪のプリン頭にジャラジャラピアス。 執事男の面影はすっかりなくなり、いつものチャラ男だ。 公園の中に入ったユウジを追いかける。 ユウジは真っ直ぐに奥に向かった。 誰かに手を振っている。 「誰?」 小学2、3年くらいの男の子だった。 ユウジと男の子の二人でブランコに並ぶ。 「ありがとう。パパ、昨日戻ってきた。すごく優しくて、ママも朝からずっとニコニコ笑顔だよ」 「そうか、良かった。パパはね、愛し方がわかってなかったんだよ。ちゃんと教えてあげたから、これからは大丈夫だよ?」 「うん、僕も大丈夫だと思う」 男の子は、瞳をキラキラさせた。 そして、ポケットからキャラメルの箱を取り出した。 「約束のお礼。じゃあ、バイバイ!」 「うん、バイバイ!」 男の子は、走り去った。 そして、公園の出口で振り返り、笑顔で手を振る。 見送るユウジの顔も笑顔だ。 「友達?」 とっくに気付いていたのか、俺の姿をみても顔色を変えない。 いつもの調子で、ごく自然に言葉を続けた。 「うーん、友達っていうか、依頼人。自分の親の不仲に悩んでてさ。相談を受けたってわけ。色々調べて1番ベストな方法をとった。つまり、少年との暴力的なセックスでしか勃たないと思っていた勘違い男に、本当は女も愛せるバイで、暴力的じゃない普通のセックスでも十分満足できるってことを教えてあげたって感じ? もっというと、赤ちゃんの頃から知ってる孫みたいな女の子に間違えて手を出して子供を生ませたものの、意気地がなくて2度目に踏み切れないで、その代償行為に少年を傷つける事で満足していた男に真実を教えたってところかな? ま、それが今回の本当の依頼内容」 「まさかと思うけど、そのキャラメルが報酬?」 「うん。あの子の1ヶ月分のおやつ。貴重だよ?」 あの金剛組の組長を強姦する報酬が、キャラメル一箱。 命がかかった危険な仕事なのに、この人たちは……。 「安すぎるんじゃない?」 「あの子にとっては、すごく価値のあるものだから。ほら?」 ユウジは、箱からキャラメルを1つ取り出すと、俺の口に放り込んだ。 甘い、懐かしい味が広がる。 こんなに優しい味のキャラメルは初めてかもしれない。 「美味しいでしょ?」 「甘い!」 わざと、しかめっ面を作る。 ユウジは、そんな俺をクスリといつものヒョウヒョウとした顔で受け流して、 「さて、そろそろ夕飯の時間だ。帰るよ? お世話係さん?」 と手を差し出した。 そんな顔しても、ぜってー、絆されないからっ! その手を素直にとることはできなくて、パチンとはたきつつも、肩を並べて歩き始める。 頭の中には、男の子の心からの笑顔と、それを見つめるユウジの優しい笑顔。 俺の胸はいつの間にか、暖かなもので満たされていた。

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