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大人の社交場

俺は、恐る恐るその建物に入った。 見るからに近所のおばちゃんという感じの女性がフロントにいる。 スーパー銭湯というより、普通の銭湯っぽい。 それも、かなりアットホームな。 「大人1人」 「えっと……男湯……でいいんよね」 なんだ? どういう意味だ? 「はい??……えっと……ここって、女湯も入れるの?」 「……あ、男であってたのか(ボソッ)」 「はい?」 「いえ、なんでも。はい、男は男湯のみですよ。はいはい、これね。ロッカーはその奥を真っ直ぐ行ったところ」 「はぁ」 とんでもないことを呟かれた気がする。 おばちゃんは誤魔化すように、手拭いとバスタオル、そして浴衣を渡してきた。 腑に落ちないながらも、気にせずに奥に進む。 今は任務第一。 時間が中途半端だから閑散としている。 誰の姿も見かけない。 ロッカーはすぐにわかった。 手早く衣服を脱ぐと、手拭いで股間を隠しながら湯気が立ち込める大浴場の引き戸をあけた。 「誰もいない……」 10畳ほどのこじんまりした湯船には人影は全くない。 その横に設置された3つほどの洗い場にも、もちろん誰の人影もない。 折角、お金を払ったのに不発か? やはり、深夜の方が良かったか? 半分後悔をしながら、目的のサウナを目で探す。 「あ、これか!」 湯船の奥に三段ほど階段があり、その奥に木で出来た入り口らしき扉を見つけた。 まずは、ちょっとだけ確認するか。 この様子だとここも誰もいないっぽいけど。 人がいないことで、さっきまでの警戒心はすっかりなくなり、俺はサウナの入り口を無造作にひらけた。 ひぇーーーー 中は想像を裏切る光景だった。 閑散とした外に反して、サウナの中は、ひしめく人、人、人。 何人くらいいるのだろうか?? 俺は、一瞬で値踏みするような視線にさらされた。 「えらい、かわいらしい子が入ってきたな。ほれ、ここに空きがあるで? こっちにおいで」 背中に竜のモンモンがはいったおっちゃんが奥から呼び掛けてきた。 「行くことない。そのおっさんしつこいで。あんた壊されてしまうわ。こっちにおいで。優しくしたるから」 手前のハゲのおっさんが俺の手首を掴み引っ張ってくる。 なに?なに? これって、どんな制度よ?? そうこうしているうちに、手前の二人がピストン運動を始めた。 マジで~!!ここで!! サウナはただでさえ熱気が立ち込めているのに、人口密度がたかくてさらにムンムンしている。 今、入って来たばかりの俺でさえ、じわりと汗が滲み出てきたほどだ。 そんな状態なのに、こんなところでイタシて、倒れないのだろうか?? 「な!!」 異様な光景に呆然と立ち尽くす俺に痺れを切らしたのか、モンモンのおっさんが立ち上がると腕を伸ばした。 そのまま、あろうことかムンズと俺の股間をわし掴んだ。 「ひぃー」 言葉にならない悲鳴がもれ、ハラリと腰の手拭いが落ちる。 手拭いの間からは隠し持ってきた似顔絵(ちんこの)がチラリと顔をのぞかしていた。 俺は目のはしにそれを認めると、任務を思い出した。 そうだ。俺はチンコを探しに来たんだ。 俺は、股間の手を振り払うと似顔絵を拾い上げ、おっさんのチンコと見比べた。 違う、こいつじゃない。 亀頭の張り出し具合が明らかに違う。 「なんや? 何しとるんじゃ?」 「失礼します」 隣のおっさんの手拭いをまくりあげると、それも検分する。 こいつも違う。 ゴツゴツと血管が浮き出ているが長さが足りない。 「失礼します」 ピストン運動をしていた二人のものも忘れずにチェック。 俺は次々にその場にいる人のチンコを調べ回った。 サウナの中は、それまでの熱気が嘘のように、シーンと静まり返り、皆、抵抗せずに(呆気にとられていただけかもしれないが)されるがままになっている。 「ご協力感謝します」 俺は、恐るべき早さで全てのチンコを調べるとサウナを後にした。 12、3人ほどいたが、どれも似顔絵のチンコとは違った。 縦横のバランスや、表面の滑らかさ、亀頭の張り出し具合。 全部違う。 1つとして同じチンコはない。 チンコはどれも同じという、それまでの常識を覆す結果に驚きを隠せないながらも、洗い場で髪と体を手早く洗い、湯船に浸からずに脱衣場に向かった。 そのまま身支度を整えて外にでる。ユウジが来たときと同じ場所で待っていた。 「目的のチンコはいなかった」 「うんうん、やっぱり?」 「わかってたんなら、言ってよっ!」 ユウジは、ハハハと声を上げて笑うと車を走らせた。 「で、次はどこに向かうの?」 「ん? 帰る」 「え? 調査はどうするの? まだいけるよ」 よくわかんないけど、大人の社交場は、ここだけってことはないだろう。 時間的に、あと5件は行けそうな気がする。 「だいたい、わかったからいい」 ユウジが珍しく考え込んでいる。 どうしたんだろ? 無言のうちに家に帰りつくと、タローがリビングで腹筋をしていた。 俺は、しめた!と、その腹の上にドカリとまたがった。 「タローさんのチンコ見せて」 返事を待たずに下着とスウェットを引き下ろす。 「わ、でけー」 エレクトしてないのに、この質量というか重量というか……とにかく、圧倒的な存在感。 うん、やっぱり日本一のモノは違う。 タローは上半身を起こすと、腹にまたがったままの俺を背中から抱き締めた。 「何? 俺のを嵌めたくなった? 可愛くおねだり出来たら、お尻にいれてあげようか?」 耳元で囁く甘い声に、背筋がゾクゾクする。 なんか、俺、ヤバくない? 「違うしっ! チンコ探してるだけだから!」 慌てて否定すると、ポケットから似顔絵を取り出して後ろに放り投げた。 凄腕の竿師の術中に、まんまと嵌まる訳にはいかない。 タローの上から飛び降り、安全な場所まで避難する。 タローは、そんな俺の反応に笑みを浮かべながら、紙片を広げた。 途端に眉間にシワを寄せる。 「ん? このチンコ……ユウジ、これってお前のだよな」 えーー!!! なんだって?? 驚愕の表情を浮かべる俺に、ユウジは力なく頷いた。

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