4 / 36
[1]初仕事?
リボン代わりの赤い荒縄で亀甲縛りにされた尻尾男は、翌日、依頼人に引き渡された。
もちろん、依頼通りの処女のまま体を開発され、極限まで高められた状態で。
その後、依頼人が彼をどうしたかは知らない。
「うちはユーザーフレンドリーな会社だから、強姦屋の看板があっても強姦しない場合もあるんだよ」
と、すっぽんのユウジはドヤ顔を作った。
ユーザーフレンドリーって、その使い方あってる?
突っ込みどころ満載過ぎて、もはや何と言っていいかわからない。
取りあえず、「会社だったの!?」 とだけ、突っ込んでみる。
とにもかくも、仕事の全体像をつかむ前に最初の案件はあっさりと終わってしまった。
そのまま平穏な日々が続くと思われたが、休む間もなく、次の依頼に取りかかることになった。
思ったより、強姦屋の需要はあるらしい。
知り合いを強姦して欲しいと考える人間がいるとは、恐ろしい世の中だ。
「すでに、下調べは終えて仕込み済み。手元の資料を見て? あ、そうそう、次からそういうのは、君にやってもらうからね」
な、なんだって?
さすが、口八丁な元やり手の営業マン。
さりげなく、ぶっこんでくる。
「やるかよ! 俺は犬のお世話係で雇われたんだから、そんなことまで範囲外だっちゅーの」
慌てて否定する。
黙っていると、引きずられて深みにはまりそうだ。
犯罪の片棒は担ぐまい。ばーちゃんに怒られる。
ここはきっと、死守すべき所だ。
「そうだよ。君は犬のお世話係でしょ? お世話をする犬の情報を知らなきゃお世話は出来ないでしょ? お金もらうってことはプロなんだから、ちゃんとプロの仕事をしなきゃダメだよ。プロというのはね……」
伝説の竿師のタローがうんざりした顔をして部屋を出て行ったが、ユウジの言葉はとまらない。
彼はプロの心得について小一時間くらい語ったあと、やっと本題にはいった。
その頃には、俺は、社会人としての自分の甘さを猛省し、プロのお世話係になるべくすっかり性根を入替えていた。
恐るべし、ユウジの口車。
そんなことはさておき、次のターゲットだ。
手元の紙に目を落とす。
いつの間にやら、タローも戻って来て資料を熟読している。
「あのさ、ここに金剛組組長って書いてあるけど……」
「うん」
「金剛組って、あの金剛組? 今、抗争事件でニュースを賑わしている……」
「うん。その金剛組。金剛組は、wikiによると、『日本最大規模の指定暴力団。組員数は約14,100人。山形県と広島県と沖縄県を除く44の都道府県に系列組織を置いている。吉本会、沖縄組、および今川会とともに国家公安委員会から主要暴力団に位置づけられている。』だって、すごいねー」
ユウジは、ケタケタと笑い出した。
「ユウジさん、笑ってる場合じゃないよ。そんなの無理っしょっ? しかも、抗争事件の真っ最中で警察も24時間体制で見張ってるんじゃないのっ!?」
「そこを何とかするのが、プロでしょ! タローはどう思う?」
タローは、顎を擦りながら不敵な微笑みを浮かべた。
「うーん、そうだな……だけど、もう、依頼を受けたんだろ? それじゃ、やるしかないな」
「ちょ、ちょっと! 相手、72歳のじじいだよ! タローさん、そんな人に勃つの? しかも、命を狙われるかもしれない状況で? 無理無理、絶対に無理」
この人たち、頭がおかしい。
そんなの絶対に無理に決まっている。
死にたいの?
いや、死ぬよりも恐ろしい目に合わされるに違いない。
「俺は、プロだ。 どんな状況でも、どんな相手に対しても突っ込むことができる。しかも、最高の快楽を与える自信もある」
タローは、胸を張り、ドヤ顔を作った。
何、その自信?
「心配しないで。ちゃんと秘策があるから。ほれ、資料2ページ10行目の『ターゲットは、無類の美少年好き』ってところに注目! ターゲットの好みど真ん中の美少年を準備したから、それでおびき出そう」
「美少年って、ちゃんと協力してくれるの? そんな危険なこと、普通ならしないよ……その人、本当に大丈夫?」
いくら金を積まれても、俺ならやらない。
ましてや、美少年がそんなことをやってくれるのだろうか?
「え、やるでしょ? 危険なんてへっちゃらだよね? 使命感に燃えている、『プロのお世話係』なんだから」
「へ??」
二人の視線が自分に注がれ、間の抜けた声がでる。
び、美少年?
どこに?
「さっき、仕込み済みって言ったでしょ? はい、君が今回の仕込み。全員の命がかかっているんだから、しっかりね?」
えーーーーーーーーー!
俺の絶叫が、響き渡った。
ともだちにシェアしよう!