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異形の森
〈要目線〉
碧人の家の近くには『異形の森』と呼ばれる森があった。
俺は人狼で、人間の姿をしているが、狼の血も入っている。この森は俺の他にも、妖怪や幽霊、妖精の類いも棲んでいる。
人間にとっては得たいの知れないものが棲んでいる。だから異形の森と呼ばれているのだと、狐の長である白眉丸 に教えてもらった。
白眉丸は長い銀髪を後ろに束ね、肌が白く、唇が異様に赤い。長く長く生きているため知恵者だが、掴み所がなく、何もかも知っているかのような物言いをする。
「白眉丸。人と話すにはどうしたらいい?」
俺がそう聞くと、白眉丸は長煙管の煙を吐きながら、「村に下りて、話し掛ければいい」と事も無げに言い返された。
「それができたら、苦労はしない」
「何だ。好きになった者でもできたのか?」
「わからない…でも、また会いたいんだ」
白眉丸は口角を片方あげて笑った。
「贈り物でもしてやればいい。人間は貪欲だ。贈り物をしたら振り向いてくれるかもな」
「…贈り物」
要は早速、思いつく限りものを思い浮かべた。木の実、花、魚、蕨 や茸、野菜…。
とにかく、たくさん置いてきた。
花を送ったあの日…
やっと碧人と話すことができたのだ。
やはり、白眉丸は物知りだと要は感心した。
〈白眉丸視点〉
要は馬鹿正直すぎる。
普通、物好きでなければ、あんな贈り物喜びはしないが、意外と上手くいっているらしい。
要のあの馬鹿正直な所は嫌いではないが、時々危なっかしく見える。
人間は嘘をつく生き物だ。純粋なものは一握りなのだ。
まさに今、人間はこの森を潰そうと画策している。
そんなことはさせない。
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