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欲望

「要は…僕のこと、好きなの…?」 「好き」 要は即答すると、碧人を横抱きにしながら座った。 「…僕、体弱いし、役に立たないし…良いところ、全然ないよ?」 碧人は自分で言いながら、悲しくなってきた。 こういうことを考えるとき、父の顔と紅緒の顔を思い出す。 父の失望した顔、紅緒の勝ち気な顔。 特に紅緒は、碧人が近所の子供に苛められていた時すぐに助けに来てくれた。 (『たまには言い返せ!』なんて、言われたけど、僕は弱虫だったから、ずっと言い返せなかった…) 「何を考えてる?」 要は碧人の顔を覗きこんだ。 「昔のこと…思い出しちゃって…」 「俺は、碧人の全部が好き。一番は花が好きって笑った顔が好き」 碧人は顔が熱くなるのを感じた。 (し、心臓がもたない…) こんなにも他人から好意を寄せられるのは初めてだったからだ。 「そうやって、赤くなるところも可愛い」 要は碧人に軽く口づけをした。 「か、要…。お、男同士でそういうのは…」 「嫌?」 「あ、嫌じゃ…ないけど…」 「良かった。またしてもいい?」 要は人間的な常識が欠如していたが、碧人も要と出会い、友情以上の何かが芽生えていることに少しずつ気づいていった。 「……少しだけね?」 碧人は拒否することもできず、要と逢瀬を続けることとなった。 〈要視点〉 碧人に口づけしてから、俺の体はおかしい。 碧人のことを考えると、俺の体が熱くなる。特に一物が。 朝の生理現象の時ぐらいしか、勃ち上がらなかったのに、今では朝以外にも、碧人のあの照れている表情を思い出すだけで、勃ち上がってしまい、その度に抜いた。 抜くときも、碧人のことを考えた。 碧人のあの白い肌や赤くなった顔を思い出しながら抜くのだ。 自分はもしかして、碧人と交尾したいと思っているのだろうか? 堪らず、白眉丸に相談しに行った。 「白眉丸!聞きたいことがある」 「何だ。いきなり」 相変わらず、白眉丸は気だるげに木の枝に座り、大木に寄りかかりながら煙管をプカプカしている。 「実は……」 これまでの経緯を説明すると、白眉丸はふっと笑った。 「お前、人間と交尾するつもりか?しかも、男と?」 「そう…だと思う」 「ただの人間をここにいれる訳にはいかない」 「何故?」 「人間だからだ」 「じゃあどうすれば…」 ふーっと煙管の煙を吐くと、白眉丸は「お前のにおいを入れてやればいい」と答えた。 「人狼の血を飲ませると長生きする。その代わり、人間には戻れない」 「人狼になるってことか?」 「人狼になるわけではない。ただ、お前の血を飲ませることでお前と血の繋がりができる。森の者も手出しできぬよ。ただ、お前が死ねばその人間も死ぬ。その逆も然り…。その覚悟があるのなら、やってみるがいい」 白眉丸はにやりと笑った。

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