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第18話 特別

 お腹様とのお勤めが終わった後は、またご神託とお勤めの日々が始まった。  今までと少し違うのは、ご神託を参拝者様の目の前で占う事。  掬った玉砂利をぱらぱらと零して、畳の上に現れた文様を読み取った。 「吉日は、九月と出ました。九月に宴を催せば、最も多くの政治資金を得られるでしょう。ただ、少し先の事でございますので、運命は移ろいます。日にちまでお知りになりたければ、一ヶ月前にまたおいでください」 「ありがとうございます、神子様。これで枕を高くして眠れるというものです」  参拝者様は、心底安心したように息をついた。  ご神託の結果を、直接参拝者様にお伝え出来るというのも、良いものだな。  嬉しそうなお顔を見ると、僕も嬉しい。  参拝者様は、頬を緩ませて笑いかけてきた。 「それでは、神子様。お勤めもお願い致します」     *    *    * 「あっ・んぁ・あぁんっ」  僕は後ろから、参拝者様に貫かれていた。久々に味わう肉棒の感触に、僕は乱れる。  お腹様とのお勤めは、身体は心地良かったけど、僕の霊験を求める参拝者様と違って種付けの為だったから、何処か心は虚ろだった。  やっぱり、僕にしか出来ない神聖なお勤めが、心も身体も満たされる。 「あっあ・善いっ・達します……!」  今日の参拝者様は、幼い頃からのお相手で、僕の善い所を知り尽くしてらっしゃった。  僕が、後ろから貫かれるのが心地良い事も。  六十代も末なのに逞しく太い雄をお持ちの方で、この方とのお勤めは、僕を密かに昂ぶらせた。   「神子様……っ! 私もイきますっ」  パンパンと、僕のお尻と参拝者様の下腹の肉が打ち付け合う音が響く。それすらも、耳から身体に入って、僕を絶頂に追い上げる。  僕は四つん這いになってお尻だけを高く掲げ、荒々しいとさえ言える行為に溺れていた。  ああ、政臣さん……!  弾ける瞬間、涼しげな奥二重が笑っていた。 「あぁ・んぁぁああ――っ!!」  達する時の後ろの締め付けに合わせ、参拝者様も僕の中を精液で満たす。 「はぁ……んっ」  熱い楔が抜き去られ、喪失感に呻いた。  繋がりがなくなって、僕は掲げていたお尻を腰砕けに崩す。  お勤めの後の心地良い疲労感に、ぐったりと俯せのまま薄い胸を喘がせた。  参拝者様は、煙草に火を点けた。僕は恍惚の表情で、たゆたう煙をぼうっと見詰める。 「……神子様、特別な方でもお出来になられたか」 「え……な、何故ですか」 「名前を呼んでおられた」  僕は思わず両手で唇を覆った。  参拝者様はそれを見逃さず、何処か皮肉っぽく笑う。 「先代から、近い内にお勤めはなくなると聞きました。それと関係が?」 「いいえ! 先代は、成人を機にお勤めを廃止すると仰いましたが、わたくしが続けたいと申し出ました。参拝者様に霊験をお分けする喜びが、今の私の生き甲斐ですので」  何故だろう。参拝者様の笑みが、深くなった。 「なるほど。幼い頃からお勤めに励んでこられた神子様は、もはやお勤めなしではいられない身体だという事ですな」 「はい。わたくしは、神聖なお勤めが出来る事に、誇りを持っております」  幼い頃からのお勤め相手である事も手伝って、僕は身を起こして、何気なく訊いていた。 「参拝者様は、何故そのようにお笑いですか? わたくしのお勤めに、至らぬ点でもありましたか?」 「ああ……いえ。お気になさらず」 「仰ってください」  参拝者様は、笑みを消して灰皿に煙草を押し付けた。  僅かに口篭もった後、家人に聞こえぬよう、低く囁く。 「……特別な方が出来ては、お勤めを続けるのは難しいでしょうな。先代は、それを思って、お勤めをやめると言ったんでしょう。神子様も、先代のお気持ちを汲んで差し上げる事ですな。参拝者も、違う方の名前を呼ばれていい気はしない」 「そうなんですね。申し訳ないです」  僕は心を込めて、平伏した。 「いや。長い間、お勤めして頂いたから、正直に申し上げたまで」  参拝者様は、全裸のまま正座して、膝を僕の方に向けた。僕も同じようにする。  これが、お勤めが終わりの合図。 「お勤め、ありがとうございました」  そう平伏して、僕はお勤めの間を後にした。

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