18 / 41
第18話 特別
お腹様とのお勤めが終わった後は、またご神託とお勤めの日々が始まった。
今までと少し違うのは、ご神託を参拝者様の目の前で占う事。
掬った玉砂利をぱらぱらと零して、畳の上に現れた文様を読み取った。
「吉日は、九月と出ました。九月に宴を催せば、最も多くの政治資金を得られるでしょう。ただ、少し先の事でございますので、運命は移ろいます。日にちまでお知りになりたければ、一ヶ月前にまたおいでください」
「ありがとうございます、神子様。これで枕を高くして眠れるというものです」
参拝者様は、心底安心したように息をついた。
ご神託の結果を、直接参拝者様にお伝え出来るというのも、良いものだな。
嬉しそうなお顔を見ると、僕も嬉しい。
参拝者様は、頬を緩ませて笑いかけてきた。
「それでは、神子様。お勤めもお願い致します」
* * *
「あっ・んぁ・あぁんっ」
僕は後ろから、参拝者様に貫かれていた。久々に味わう肉棒の感触に、僕は乱れる。
お腹様とのお勤めは、身体は心地良かったけど、僕の霊験を求める参拝者様と違って種付けの為だったから、何処か心は虚ろだった。
やっぱり、僕にしか出来ない神聖なお勤めが、心も身体も満たされる。
「あっあ・善いっ・達します……!」
今日の参拝者様は、幼い頃からのお相手で、僕の善い所を知り尽くしてらっしゃった。
僕が、後ろから貫かれるのが心地良い事も。
六十代も末なのに逞しく太い雄をお持ちの方で、この方とのお勤めは、僕を密かに昂ぶらせた。
「神子様……っ! 私もイきますっ」
パンパンと、僕のお尻と参拝者様の下腹の肉が打ち付け合う音が響く。それすらも、耳から身体に入って、僕を絶頂に追い上げる。
僕は四つん這いになってお尻だけを高く掲げ、荒々しいとさえ言える行為に溺れていた。
ああ、政臣さん……!
弾ける瞬間、涼しげな奥二重が笑っていた。
「あぁ・んぁぁああ――っ!!」
達する時の後ろの締め付けに合わせ、参拝者様も僕の中を精液で満たす。
「はぁ……んっ」
熱い楔が抜き去られ、喪失感に呻いた。
繋がりがなくなって、僕は掲げていたお尻を腰砕けに崩す。
お勤めの後の心地良い疲労感に、ぐったりと俯せのまま薄い胸を喘がせた。
参拝者様は、煙草に火を点けた。僕は恍惚の表情で、たゆたう煙をぼうっと見詰める。
「……神子様、特別な方でもお出来になられたか」
「え……な、何故ですか」
「名前を呼んでおられた」
僕は思わず両手で唇を覆った。
参拝者様はそれを見逃さず、何処か皮肉っぽく笑う。
「先代から、近い内にお勤めはなくなると聞きました。それと関係が?」
「いいえ! 先代は、成人を機にお勤めを廃止すると仰いましたが、わたくしが続けたいと申し出ました。参拝者様に霊験をお分けする喜びが、今の私の生き甲斐ですので」
何故だろう。参拝者様の笑みが、深くなった。
「なるほど。幼い頃からお勤めに励んでこられた神子様は、もはやお勤めなしではいられない身体だという事ですな」
「はい。わたくしは、神聖なお勤めが出来る事に、誇りを持っております」
幼い頃からのお勤め相手である事も手伝って、僕は身を起こして、何気なく訊いていた。
「参拝者様は、何故そのようにお笑いですか? わたくしのお勤めに、至らぬ点でもありましたか?」
「ああ……いえ。お気になさらず」
「仰ってください」
参拝者様は、笑みを消して灰皿に煙草を押し付けた。
僅かに口篭もった後、家人に聞こえぬよう、低く囁く。
「……特別な方が出来ては、お勤めを続けるのは難しいでしょうな。先代は、それを思って、お勤めをやめると言ったんでしょう。神子様も、先代のお気持ちを汲んで差し上げる事ですな。参拝者も、違う方の名前を呼ばれていい気はしない」
「そうなんですね。申し訳ないです」
僕は心を込めて、平伏した。
「いや。長い間、お勤めして頂いたから、正直に申し上げたまで」
参拝者様は、全裸のまま正座して、膝を僕の方に向けた。僕も同じようにする。
これが、お勤めが終わりの合図。
「お勤め、ありがとうございました」
そう平伏して、僕はお勤めの間を後にした。
ともだちにシェアしよう!