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スパダリ系なタラシ

「あっ...え...、なん、で...」 透き通った青い目に捕らわれた瞬間、僕の意思とは関係なく、吸い込まれるように彼の懐に身体が引寄せられる。 どうして、なんで、と頭の中をぐるぐる回る疑問が声に出てしまっていることにすら気が付かないくらい、自分の身に起こった不可思議な現象に気が動転していた。 「...また新しい取り巻きか」 いつの間にか彼の懐まで到達していたようで、脳に重量感のある低音が響いてきた。 その声が心地好く聞こえてしまうのは何故だろうか。 一音も聞き逃したくないような気さえ起こさせる。 その余韻に暫く浸っていたいところだけれど、その言葉の内容に反論せずにもいられない。 「取り巻き?残念ですけど僕は貴方の取り巻きになるつもりなんて毛頭ありませんよ?」 渋々此方が彼の取り巻きになることを受け入れるしかない、みたいな声色と雰囲気を醸し出しているが、そんな嫌々許諾されずとも自分は長く此所に留まるつもりなど端からない。 「お前...まさか一度俺の領域に入ってきて抜け出せるとでも思っているのか?俺から逃れられる訳がないだろう」 いやいや、そもそも自分から彼の領域に入ったつもりはない。 いや、入るはずがない。 僕は自由に旅するのが好きだから、誰かの「親衛隊」になろうなど一度も考えたことがないし、まして--彼のような「親衛隊」を十数人も引き連れているようなタラシの懐に進んで入るなど意味が分からない。 確かに透き通った青い目は視線を離しがたく、声は心地好く感じた。 真っ青なスーツを身に纏い、頭の回転が良さそうなエリート風でスパダリな雰囲気が漂っている、その姿にもまあ、好感が持てないことはない。 ...でも、でもだ。 如何にも一人だけを溺愛していそうな容姿、雰囲気に反して「親衛隊」をこんなにも--絶対に質が悪い奴に違いない。 そして、彼が僕を自分の領域に無理矢理引き寄せたに違いない。 「どういう理由で僕を貴方のもとに呼んだのか知りませんが、貴方と居ても楽しい時間を過ごせそうにありません。もう失礼させて頂きますね?」 そう、こんな相手のもとからは早く去ってしまうに限る。 そしていつも通りぶらぶら旅をするのだ。 自由に、何処までも。 そうすれば今日の出来事だって、彼のことだって直ぐに忘れてしまうだろう。

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