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小さな抵抗

「最近外に飛び出そうとしなくなったのは良いが...何故そう頑なに俺に従わない?遅めの反抗期か?」 彼の言葉には語弊がある。 僕は何時だって外に出ようと企んでいる。 ただ、前みたいにむやみやたらに全力疾走で逃亡しなくなっただけだ。 そして彼に従わないのは、いくら外に出ようと企んでいても逃げ切れない僕の小さな小さな抵抗である。 「僕は何故逆に皆が皆、貴方に従っているのか不思議ですけれどね。不平不満の1つくらいあるだろうに」 僕は10数人の「親衛隊」たちを眺める。 皆盲目的に彼を慕っていることが一目了然の光景が目に映る。 だからこそ多数を従える彼を、愛故に憎んでしまったり、他の「親衛隊」たちに不満でも出そうなものだが、彼らは「想い人」の側に今日は誰が一番近く寄り添うかまで細かく規律をつくり、その規律を遵守している。 ある意味尊敬の念を抱いてしまうくらいに。 まあ、僕も彼には反抗的な態度を取っているが、わざわざ「親衛隊」たちの規律を乱すメリットもないので、そちらに関しては義務づけられた規律を今のところは守っている。 「いや、彼らだって不満くらいあるだろうさ。ただ、お前と違って自分の置かれた現状を良く理解している。無駄な争いをするより従順に従っていた方が愛して止まない俺から愛情を注いで貰えることを知っているんだろう」 良く恥ずかしげもなく自分が愛されていると発言出来るな、とは思ったが、まあこれだけ一心に好意を向けられていては恥ずかしさも何もないか、と思い直す。 「お前は俺がお前自身に興味がないと思っているようだが...そうでもないぞ?確かに無駄な争い事は好まないが、お前のその小さな反抗は可愛いげがないこともない」 片方の口の端を僅かに持ち上げ、まさにニヤリと言った表情をした彼に、不覚にも僕の鼓動は早鐘を打ち始めたのだった。

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