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不吉な予感

「新入りさん、ちょっと良いかい?」 彼の言葉に不覚にもドキリとしてしまったことを悔いていた日の夜。 「親衛隊」の一人に声をかけられた。 必要な連絡事項は彼の「取り巻き」になった時に(僕は彼の取り巻きになった覚えはないが)米神に埋め込まれたマイクロチップを通して伝えられるため、珍しいこともあるものだと思った。 「何か御用でしょうか?」 一番の新入りのため一応規律通り敬語で、下手に伺いを立てる。 「親衛隊」なぞなるはずがないと思っていた自分が今や「親衛隊」の真似事をしているのだから笑えてくる。 「ああ、ご用だね。今まであんたの海王様に対する不敬を見逃してきた。一々見咎めても僕たちになんのメリットもないし、海王様も特段気にされているご様子はなかったからね」 どうやら彼は「海王」というらしい。 そう言えば今までも「親衛隊」たちが「海王様」と呼ぶのを聞いたことがある気がする。 彼らの話にあまり耳を傾けて来なかったから今更ながらに彼の名前を知った。 「だけど状況は変わった。最近海王様はお前にどうやら執着されているご様子だ。僕たちは海王様から愛情を注いで貰えるよう規律を守ってきた。海王様の一番になれなくても、せめて等しく愛情を注いで貰えるよう努力してきた。なのにお前がそれを乱しているっ!」 最初は冷静に話していた「親衛隊」は徐々に感情を押さえられなくなり、仕舞いには僕を呪い殺さん勢いで睨み付けてきた。 その視線に、流石に事態の深刻さを感じとり、真剣に耳を傾ける。 「僕は...いや、僕たちはお前を絶対に許さない。例え一時であっても新参者が僕達を差し置いて海王様の愛情を受けるなんて...絶対に許さない」 そこまで言い終えると、「親衛隊」は怒りの表情をふとかきけし、何か企みを含んだ笑みを浮かべた。 「でも、僕は優しいから...お前に温情をくれてやる。お前が破滅するまでの間だけ、海王様の愛情をお前だけにくれてやる。...有り難く思って僕たちに一層の敬意を払うんだな」 --まあ、その期間は瞬き程に短いだろうけど。 そんな言葉を残して彼は颯爽と去ってしまった。 僕の破滅? 破滅までの期間? その内容に理解が追いつかなかったが、身体はその不吉な言葉にぶるりと反応を示していたのだった。

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