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第3話

 勇者の元まで近付くと膝を付いて口元に手をかざす。  息はしているようだが、荒い。  人間の体の事は良くは知らないが、首に触れてみると少し熱く感じた。  薄汚い布を指先で剥ぐと見知らぬ傷痕が胸から腹にかけてついていた。  この傷のせいで熱を出しているようだ。 「放っておけば死ぬか」  最早、虫の息。  この間、勇者と戯れた時は擦り傷は与えたものの体力の限界まで振り回したあと、城の外に捨てやった。    私の玩具である勇者に手を出すバカ者などいないと思っていたが、どうやらそのバカ者がいたらしい。    見つけ出して罰を与えなければならない。 「このくらいの傷で死にかけるとは……」  溜息混じりに呟くと、勇者がその声にぴくりと反応した。  傷を治してやろうと傷口に触れようとした瞬間、手の中に握りしめていた懐刀が私の首に触れた。 「誰、だ……」

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