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第5話

 答える事はしなかった。  代わりに長い舌を出して、血の匂いのする傷口をゆっくり舐めて味わい堪能した。 「な、にをっ……」 「治療だ」  嘘は言ってはいない。  舐めれば舐めるほど傷口が塞がり、血が止まっていく。  別に舐める必要などないが、これは私の戯れだ。 「うっ、あっ……くっ……」  何とも唆る声で堪える勇者の姿は、色気さえ感じさせる。  やはり人間は面白い。  特にこの勇者は。 「もう痛くはないだろう」  傷があった場所に触れて、痛みがない事を確認させると驚いた顔をして私を見る勇者。  その顔があまりに唆るので、思わず傷もないのに勇者の口唇を奪っていた。

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