5 / 16
第5話
答える事はしなかった。
代わりに長い舌を出して、血の匂いのする傷口をゆっくり舐めて味わい堪能した。
「な、にをっ……」
「治療だ」
嘘は言ってはいない。
舐めれば舐めるほど傷口が塞がり、血が止まっていく。
別に舐める必要などないが、これは私の戯れだ。
「うっ、あっ……くっ……」
何とも唆る声で堪える勇者の姿は、色気さえ感じさせる。
やはり人間は面白い。
特にこの勇者は。
「もう痛くはないだろう」
傷があった場所に触れて、痛みがない事を確認させると驚いた顔をして私を見る勇者。
その顔があまりに唆るので、思わず傷もないのに勇者の口唇を奪っていた。
ともだちにシェアしよう!