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第10話

 なんて事だ。  この勇者は私が暇潰しで殺さずにいた事で、恋心とやらを拗らせてしまったようだ。  これでは魔王を倒して世界を平和になど一生かかっても出来ないだろう。 「お主……本気か?」 「……本気だ」  俯いて真っ赤になっている勇者を可愛いと思ってしまった。  おかしい。  私は人間の困った顔や恐れた顔、哀しみに打ちひしがれる姿が大好きなのに。 「……私が好きなのか……」 「そうだよ! あんたが好きなんだ!!」  これは……。  これは、ダメだろう……。  壁際で項垂れる勇者に手を伸ばしてみる。  長い爪が勇者の肌を傷付けてしまいそうで、少し怖くなった。  傷付けるのが怖いだなんて……。  こんな感情は初めてだ。

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