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第11話

「勇者よ」  傷付けないように頬に触れると驚いた勇者が勢いよく顔を上げる。  急に顔を上げたせいで爪が当たって勇者の頬に傷が走り、血が滲み出た。 「っ……」 「あ……すまない……」 「……え?」  思わず謝ると勇者がぽかんと私を見上げる。  魔王に謝られるなどと思わなかったのだろう。  その頬の傷を治す為に勇者の肩に手を置くと、舌でゆっくりと血を舐めとる。  勇者は何も言わないまま硬直している。  それをいいことに、傷が治った後も暫く頬を舐め、傷とは関係ない耳朶まで舌を伸ばした。 「なっ……ちょっ……」  流石に動揺して身動ぎする勇者の耳の中に舌を入れて掻き回す。 「ん、あっ!? ちょっ、なにっ……ひゃっ」  いちいち反応が大袈裟でそれもまた可愛く感じる。  ああ、私はもうこの勇者には一生、勝てはしないだろう……。  魔王を倒す方法がまさか、『恋』に落とす事だとは。

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