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第12話

 しかし、どうしたものか。  勇者と魔王、水と油、絶対に混じり合わないもの。 「魔王……?」  両手を怖ず怖ずと伸ばし、私の頬を挟み覗き込む勇者。  なんと可愛らしい顔をしているのだろう。  食べてしまいたくなる。 「私はお主の敵だ。殺さなくて良いのか? それとも……殺す為の作戦か?」 「作戦? あんた、そんなんじゃ死なないだろ」 「さぁ……何しろ、こんな事は初めてだ」  勇者の下唇を食むと肩をビクッと震わせ、ゆっくりと口を開く。  その隙間に舌を差し込み歯列をなぞる。  そっと離れると名残惜しそうな目をして私を見てくる勇者に感じた事のない劣情を抱いた。 「お主が私を選ぶなら私もお主を選ぼう」 「選ぶ……って?」  啄んで、食んで、絡めて、絡め取る。  吸い付き、貪って、啜る。 「この森を封印して魔族達を外に出さないようにしよう」 「……え?」

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