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第13話
熱を孕んだ瞳で見つめられ、堪らず抱き寄せる。
「代わりに私を選べ」
「……そんなの……」
背中に回された勇者の腕は熱く、力強い。
「あんたはそれでいいのか? 仲間を裏切る行為だぞ?」
「お互い様だろう?」
「オレは……魔王討伐に失敗したダメな勇者として笑われて忘れ去られるだけだ……」
「いいや……失敗などしていない。勇者は見事、魔王を討伐し、世界は平和になったのだ」
自分の発言が信じられない。
私は魔王だというのに、勇者が貶される事が嫌だと思っている。
勇者が馬鹿にされるくらいならば、私など何回でも倒されて構わないと。
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