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第2話 魔法学校入学(2)

 学校までは、家の近くの公園に迎えが来るから、と教えられた。だから、少し古ぼけた大きなスーツケースを押しながら、公園に向かった。  朝からこの時間帯に公園にいる人はいなくて、通勤や通学で駅に向かう人たちの流れが、ぽつぽつある程度。 「こんな時間に、公園で遊んでる子はいないか」  公園の入口から見ていた僕は、迎えはまだかな、と思って道路のほうを振り返ったら、いつの間にか、真っ黒で立派な車が止まっていた。  車が近づいてくる音も、止まるようなブレーキ音も、まったく気が付かなかったのに。  そして、自動で静かにドアが開き、立派な車の内装に僕は呆気にとられた。 「早くお乗りにならないと、遅れますよ?」  気が付くと、僕の隣にタクシー会社の制服のようなものを着た柔和な顔のおじいさんが、僕の大きなスーツケースを車の後ろのトランクに詰め込もうとしていた。 「あ、す、すみませんっ」  僕が手を出すよりも早く、おじいさんは荷物を入れると、トランクのドアをさっさと閉めてしまい、僕は仕方なく小さな荷物だけ胸に抱え、後ろの席に乗り込む。  こんな豪華な車になんて乗ったことがなかったので、思わずキョロキョロと見回しながら、車内一つ一つの細工に目を奪われていた。  指先で触れてみたり、近くまで寄ってのぞき込んだり、と夢中になっていた。  そんな僕を、ニコニコしながら運転手のおじいさんが見つめていたことに気づかなかった。 「はい、着きました」 「え?」  僕が車に乗り込んで、十分もしないうちに、運転手のおじいさんがそう言った。  いつの間に車が発車したのかも、どんな道を通っていたのかも、まったく気づかなかった。  まさか、と、思って窓の外を見ると、さっきまでは公園のそばの住宅街の風景だったはずなのに、今は黄色や赤に紅葉した大きな木々に囲まれた場所に変わってた。 「え?え?」  僕が混乱していると、運転席に座ったおじさんが自動ドアを開けて、こう言った。 「ようこそ、ナイラム魔法学校へ」  そう言うと、タクシー会社の制服のような姿から、所謂、イメージ通りの魔法使いのような黒いローブを羽織った姿で座ってた。 「えええっ?!」 「ノア・アシュレー、早く学校に入りなさい。入学式が始まってしまうよ」  そう言うと、目の前の大きな建物を指差して、微笑んだ。  僕は驚きながらも、ペコリと頭を下げると、小さな荷物を抱えて車を降りた。 「あ、スーツケースは」  思わず振り向くとそらこにはすでに車はなくなっていた。  当然、一緒に僕の大きなスーツケースもない。 「え、?ええ??」 『スーツケースは君の部屋に置いておくよ。早く、入学式の場所に向かいなさい。』  空から運転手のおじさんの声だけが響いてきて、僕だけが残されてしまった。