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第3話 魔法学校入学(3)
「……うわ。」
それが僕が魔法らしきものを見た初めての出来事だった。
その現実に気づいて、僕の背筋に寒気が這い上がった。
僕はとりあえず、おじいさんが指さした建物に近づくと、僕と同じような格好をした子達が固まっているのに気が付いた。
そこは、古くて大きなお城のような建物の入口で、そのドアの前に20人くらいの子達が銘々に、話をしたり、古い建物を見上げたりしていた。
僕は人の姿が嬉しくて、小走りに彼らのそばにかけよる。
近くに来て気が付いたのは、少しばかり僕よりも幼い感じだということ。
だけど、今、話しかけられるのは彼らしか見当たらない。
「こんにちわ。あの……」
僕の声に、一気にニ、三人の子達が振り向いた。
みんな随分と可愛らしい子達で、一瞬目を奪われる。
その中の一人が、僕の目を見て「何でしょうか」と、にこやかに答えた。
金髪のクルクルとした巻き毛、キュッとつりあがった大きな青い瞳、まるで何かの絵から飛び出してきた天使みたいだ。
思わず見惚れそうになるのを、必死にこらえて、話しかけた。
「あ、あの、入学式って、どこであるの?」
驚いた顔で僕を見上げてくる子達。
その中で、最初に返事をした天使だけが、表情を変えずに答えてくれた。
「それでしたら、ここで僕たちと一緒にいれば大丈夫ですよ。僕たちも、これから、入学式に出るのですから」
え?
思わず周囲を見渡した。
僕達以外に先生らしき姿は見当たらない。普通、引率の先生がいたりするものじゃないのか?
それに、やっぱり、彼らは僕より年下に見える。僕は場違いな場所に来ているのではないか。
閉められている古い大きなドアを見つめる。
この先に、どんな新しい世界がまっているのであろうか。
不安が膨らんできて、あと少しで押し潰されそうになった、その時、ようやく、重々しい音と共に、ドアが開いた。
ドアの奥には薄暗い大きな部屋が広がっていた。
『さぁ、入ってらっしゃい』
大きな部屋から響くおばあさんの声とともに、空気が震えた。
いつの間にか自然と二列に整列した状態になった僕たち。
この中で一番背が高かった僕が、必然と最後尾になる。
誰一人声も出さずに、ぞろぞろと建物に入っていき、一番最後に僕が入ったと同時に、大きなドアが音もなく閉まった。
一瞬暗闇に慣れるまで、視界が真っ暗になる。
でも、すぐにボウッと前の方が明るくなった。
そこは少し高くなったステージのようなところで、壇上にいるのは、僕が映画ややテレビで見るような魔法使いのおばあさんではなく、普通に黒っぽいスーツ姿のおばあさんだった。
とても背が高くて、おばあちゃんと比べたら倍くらいありそうに見えた(それだけ、おばあちゃんが小さいってことだけど。)
まるで兵士たちを睥睨するような眼差しで、僕たちを見下ろしているように見える。
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