20 / 160
第20話 探索の旅立ち(6)
「おじいさまは、なんと?」
「僕の母を探しに行くと……フローラって、僕の母の名前だったんですね」
「ええ。フローラも私の大事な教え子の一人でしたから」
校長先生が、もう冷えてしまった紅茶を飲み干した。
それを見て、僕も残っていた紅茶を飲む。後味が少し苦い気がしたのは、冷えてしまったせいだろうか。
「彼らはどこへ向かうと、書いてありましたか?」
僕に視線を合わせずに、空になったティーカップを見つめながら校長先生が聞いてきた。
「えと、母の痕跡を見つけた最後のところへ向かうとだけ……」
「そう……本当に、あの人たちは言葉が足りないのだから……ということは、あそこに行ってから……」
難しい顔をしながら、しばらく無言になる校長先生。
「あ、あの、校長先生は、母のことをご存じなのですか?」
僕が、おずおずと聞くと、校長先生は、とても優しそうな顔を浮かべながら、ゆっくりと話し出した。
「え、ええ、私の教師人生の中で、一番の……教え子……でしたよ……」
あ……あれ?先生の声が変だ。
「せ、先生……なんか、変です……」
いや、変なのは僕?身体に力が入らなくなって……眠気が……
「せ……んせ……い」
僕は、真っ暗な世界に落ちていった。
ともだちにシェアしよう!