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第21話 探索の旅立ち(7)

***  ソファに倒れ込んだノア・アシュレーを、悲し気な顔で見つめるヘイウッド校長。小さくため息をつきながら、ティーカップを片付けていると、静かにドアを開ける者がいた。 「部屋に入る時は、ノックをしなさいと、教えられませんでしたか、ヘンリー」 「すみません、校長先生。」  謝っているようには聞こえない不遜な声。  魔法省の役人のヘンリー・フルブライトは、ゆっくりと部屋の中央に向かってきた。黒い上下のスーツを粋に着こなしてはいるものの、頭部は少し寂しくなっている。 「もう、彼も眠っている頃だと思いまして。」  ソファの上からのぞきこんでノアを見下ろす。 「彼から、話は聞けましたか?」  ナレザールの手紙は、ノアが倒れ込む時に胸に抱え込んでしまったせいで、覗き込むことができなくなってしまった。 「ええ、ナレザールは娘の痕跡を見つけた最後のところへ向かったらしいわ」 「最後の場所は、ご存じですか」  するどい眼差しで、ヘイウッド校長を見つめる。 「ええ」 「では、彼をそこまで連れていきましょう。そこから先は、コレに任せるしかないでしょう」  そう言ってヘンリー・フルブライトは、スーツの中から、掌サイズの小さな透明な箱を取りだした。その中には、子犬のようなモノがスヤスヤと眠っている。 「それは?」 「魔法省で開発した新しい魔法犬です。彼とコレで追いかけてもらうしかありません」 「はぁ……」  ヘイウッド校長は重くため息をつく。 「この子に、こんなことをさせたら、ナレザールは激怒することでしょう……」 「どんなに怒られたとしても、これは我々のためには必要なことなのです」 「しかし……」 「そもそも、彼がこの学校にいる意味があるんでしょうか」 「っ!?」  言葉もなく、ヘンリー・フルブライトを見つめ返す。 「我々は二年待ちました。最初の一年は仕方がないと思いました。なんとか二年目も越してこれました。しかし、もう、限界です。いつまでも、長期の休みとは言ってられません」  そう言うと、ノアの手元から手紙を取り上げたが、一瞬でそれは燃えてしまった。 「本当に、あの人は勝手なのですから」  苦々しく言うと、ノアを軽々と抱き上げた。 「では、彼は連れていきます。後のことはヘイウッド校長、よろしくお願いいたします」  重いドアが静かに勝手に開くと、ヘンリー・フルブライトは部屋を出て行った。  ヘイウッド校長は、二人が出て行くのを立ち上がるでもなくただ見送りながら、苦しそうに小さく呟やいた。 「……ナレザール、ソフィア、ごめんなさい……」

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