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第22話 探索の旅立ち(8)
***
いつものように昼休みにノアの顔を見に行った。
昨日は入学式の後、エミールとともに先生方の手伝いに駆り出され、部屋に戻れたのは午後九時を過ぎていたので、ノアのところに行くのを諦めた。
今朝は今朝で、別の用事で先生方に呼び出され、俺のノア不足は限界だった。
「エミール、行くぞ」
「はいはい」
呆れ顔で俺の後をついてくるエミール。
どんな顔をされても、俺には関係ない。
この時間なら、まだ教室移動はしてないだろうとふんで、ノアの教室をのぞきこむが、彼の姿が見当たらない。
仕方なく、そばにいた男子生徒を捕まえてノアのことを聞くと。
「ノア?」
訝しげに俺たちの顔を見比べる。
「あぁ、ノア・アシュレー」
焦れったく思いながら、できるだけ平静に言ったのだが、次の言葉に、俺は驚いた。
「そんなヤツ、いませんよ?」
「はぁっ!?」
確かにノアには友達らしいのは、俺たちくらいしかいなかったのは、認めるが、存在すら否定することはないだろ?!
「何言ってんだよ」
俺は怒りを抑えつつも、声には滲み出てしまったらしく、目の前の生徒が真っ青になっている。
「レヴィ、落ち着け」
エミールの声で、なんとか深呼吸して、怒りを抑え込む。
「お前な、たとえ、気に入らない奴だからって、そういう言い方はないだろ」
俺にしては頑張ったとおもう。そこに、今度は、キア・ハザールがそいつの後ろから現れた。
「先輩方、なんですか。いじめですか」
いつも通りに生意気な顔で俺達を見上げてくる。
入学式の頃はチビッ子で可愛らしかったのが、いつの間にか、ノアよりもでかくなって、可愛いげがなくなった。
「ノアは?」
ノアをいつも目の敵にしてるこいつに聞くのも癪だったが、それでも、聞かずにはいられなかった。
「は?」
きょとんとした顔で俺を見る。
「だから、ノアだよ。ノア・アシュレー」
「誰ですか、それ。大魔法使いナレザールの親戚かなんかですか?」
俺とエミールは、思わず固まってしまった。こいつ、本気で言ってる。嫌な奴だが、嘘をつける奴ではない。エミールと目を合わせると、俺たちは何も言わずに、その場を離れた。後ろでは、キアが「なんだよあれ」と、文句を言ってる声が追いかけてきた。
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