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第23話 探索の旅立ち(9)

「エミール、これはどういうことだ」  小さい声でエミールに問いかける。  俺の中に、不安感がどんどん膨らんでくる。 「わからん、とりあえず、ノアの部屋にいこう」  俺たちは午後の授業を無視して、学生寮に戻った。この時間は、当然、学生たちは学校に行っているから、誰もいない。ノアの部屋のドアをノックしようと拳をドアに近づけると、まるで静電気かなにかのように、バチン、と刺激が走った。 「いてっ!?」  思わず痛みで拳を抱え込む。 「レヴィ、離れて」  エミールはそう言うと、小さく呪文を唱えると、ノアの部屋のドアがゆっくりと静かに開いた。俺は急いで部屋の中に駆け込んだ。 「ノアっ……!?」  がらんとした部屋に、俺の声が響く。  その部屋には……何も残されてはいなかった。 「な、なんだよ、これ」  外の日差しが差し込んでいる部屋には、備え付けの家具類は置かれたままだが、ノア個人の物といえるものがまったくなくなっている。クローゼットを開けてみても、空っぽ。 「エミール……ノアは、どこへ行った」  俺は怒りでおかしくなりそうだった。エミールがグッと俺の肩を掴んだ。  珍しくエミールにも怒りの表情が見える。 「……記憶操作に、この部屋……ここまでやれるのは、校長くらいだろ。」 「いくぞっ。」  俺たちは校長室へと、走り出した。

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