23 / 160
第23話 探索の旅立ち(9)
「エミール、これはどういうことだ」
小さい声でエミールに問いかける。
俺の中に、不安感がどんどん膨らんでくる。
「わからん、とりあえず、ノアの部屋にいこう」
俺たちは午後の授業を無視して、学生寮に戻った。この時間は、当然、学生たちは学校に行っているから、誰もいない。ノアの部屋のドアをノックしようと拳をドアに近づけると、まるで静電気かなにかのように、バチン、と刺激が走った。
「いてっ!?」
思わず痛みで拳を抱え込む。
「レヴィ、離れて」
エミールはそう言うと、小さく呪文を唱えると、ノアの部屋のドアがゆっくりと静かに開いた。俺は急いで部屋の中に駆け込んだ。
「ノアっ……!?」
がらんとした部屋に、俺の声が響く。
その部屋には……何も残されてはいなかった。
「な、なんだよ、これ」
外の日差しが差し込んでいる部屋には、備え付けの家具類は置かれたままだが、ノア個人の物といえるものがまったくなくなっている。クローゼットを開けてみても、空っぽ。
「エミール……ノアは、どこへ行った」
俺は怒りでおかしくなりそうだった。エミールがグッと俺の肩を掴んだ。
珍しくエミールにも怒りの表情が見える。
「……記憶操作に、この部屋……ここまでやれるのは、校長くらいだろ。」
「いくぞっ。」
俺たちは校長室へと、走り出した。
ともだちにシェアしよう!