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第24話 探索の旅立ち(10)
校長室の前にたどり着いた時には、少しは冷静になれていた。
「エミール、お前がいけ」
そう言ったのは、まだ、俺の中の怒りが燻っていたからだ。このままいくと、校長をどうにかしてしまうだろう。ノックの音が廊下に響く。
『はい』
「校長先生、エミール・シュライデンと、レヴィ・シュライデンです」
『……入りなさい』
ドアを開くと、大きな机の奥に、眼鏡をかけた校長が座っていた。
「二人とも、何事です。今はまだ授業中ではなですか?」
眼鏡の上からジロリと見上げてくる顔は、それなりに迫力はあるが、今の俺には関係ない。
「ノア・アシュレーを、どこにやったんですか」
エミールが淡々と問いかける。
「なんのことですか」
ピクリと右眉だけが小さく動いた。
「嘘をつくな」
威嚇するように低い声で睨みつける。
「レヴィ・シュライデン、先生に対して言う発言ではありませんよ」
「ハッ、先生だと。」
俺は我慢ができなくなっているのを、この人はわかってないようだ。
校長の目の前のテーブルに、思い切り手を叩きつけた。それには反応はせずに、校長は俺を睨みつける。
「ノア・アシュレーをどこへやった。答えなければ、この場で殺す」
「レヴィッ!」
「俺は本気だ」
俺は袖の中から護身用に隠している小刀を取り出した。
「レヴィ・シュライデン……物騒なものはかたしなさい」
「あなたが、ノアの居場所を教えたらな」
「そんな生徒はいまっ……!?」
小刀の刃先を喉元につきたてた。喉を反らせた校長は、初めて顔色を少しだけ青ざめた。
「……なぜ、あなたたちには、記憶を消す魔法が効かないのかしら」
俺とエミールはチラリと互いを見る。エミールが、自分の襟元からチェーンに繋がれた指輪を見せた。
「それは、シュライデン王家の王位継承者に施される対魔の護りのせいでしょう」
「……そんなものが……」
「自らを護るのに必要なものなので……さぁ、 ノア・アシュレーはどこですか」
それでも、校長は口を割ろうとしない。
「エミール、俺も我慢の限界なんだがな」
「レヴィ……」
「指を一本一本折るか」
「なっ!?レヴィ・シュライデン、なんてことを」
「あんたは、そういうことをされても、おかしくないことをしたんだよ」
俺は目で殺せるなら、殺せるような目で見下ろした。
「……ノア・アシュレーは、あなたにとって何だというのですか」
それでも居場所を教えようとしない校長。俺は、大きくため息をつきながら言った。
「ノアは俺の許嫁だ。」
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