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第25話 探索の旅立ち(11)

「は?」  校長はあっけにとられた顔をしている。 「ノア・アシュレーは男の子ですよ?」 「だからどうだというのだ」 「跡継ぎは産めませんよ?」 「産めるさ」 「え?」  何を言ってるんだ、という顔で、俺を見る。 「……あの子は人間の男の子です。だから無理です。」 「いや、あいつは人間じゃない。」  俺は小刀をしまうと、腕を組んで再び見下ろす。 「ノアは、半獣人だ」 「……まさか。だって、あの子には半獣人の兆しなど……」 「ノアは、俺の従弟だ。ずっと……ずっと探して、こうして出会えたというのに」 「従弟?それは、どういう……」 「そんなことを説明してる暇はないっ」  ドンッ!と、思い切り机を蹴飛ばす。 「レヴィ、落ち着け」  そう言って、エミールが俺の肩に手を置いた。 「校長先生、あなたもご存じですよね。人と獣人の間に生まれるのが半獣人なのは。ノアの父親は、リーナス・ハウ。彼もあなたの教え子でしたよね。そして、ノアの母親のフローラさんと共に駆け落ちしたのも」  校長は驚いたような顔で、俺たちを見た。 「リーナスは覚えています。彼も、とても優秀な子でした。でも、名前が」 「ハウは仮の名前でした。母親が身分の低い者で、王位継承権もなかった。だからシュライデンを名乗らずに、母方の名前でこちらには入学したのです。」 「……確かに、リーナスとフローラが駆け落ちをしたのは知っています……だからといって、ノアがリーナスの息子であるとは言い切れないでしょう?さっきも言ったとおり、半獣人であれば、彼の年齢であれば、その兆しでもある発情期がきていてもおかしくないでしょう。しかし、彼にはまだ、それがなかったではありませんか」 「恐らく、かなり強力な保護の魔法がかけられています。そのおかげで人型を形成し、発情期も抑制されてるのでしょう。保護の魔法については、あなたにもわかったはずでは?」  そう。  ノアには、俺たちレベルでは解けそうもない強力な魔法がかけられていた。  入学してすぐに接触してみて、ノアを護る魔法であるのはすぐにわかった。それも……フローラの手によるものだというのも。 「半獣人であれば性別が男でも子供が産めます。それに、レヴィとノアの婚約も本当のことです。ノアの三歳の誕生日に婚約式をすることになっていました。親族でその話をした時、その場には僕もいましたしね。たぶん、ノアは覚えていないでしょうけど」 「とにかく、俺は、許嫁を取り戻したいんだ。ノアはどこだ」  息をつめて話を聞いていた校長は、まるで一気に年をとったかのように、大きくため息をついた。

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