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第26話 探索の旅立ち(12)
「まったく……リーナスの名前が違ってたなんて……それじゃあ、ナレザールたちが必死に探しても見つからないはずだわ……」
「探す?フローラは実家には連絡してなかったのですか?」
俺とエミールは、訝し気に校長を見る。
「ええ。ずっと探していて。結局、いなくなって四年目の春のことよ。ナレザールの助けを求める連絡が使い魔によって届けられたのが、いなくなってから最初で最後だったそうよ」
「っ!?……もしかしてあの日か……」
嫌な記憶が蘇る。
真っ白な床と、対照的に赤黒い血だまりに倒れているリーナスと、壊されたおもちゃ。
頭を振って、嫌な映像を振り払う。
「とにかく。ノアの居場所は、どこだ」
「……もう学校にはいません」
「それはわかってるっ」
「……獣人の国と、人間の国の国境に、フローラの痕跡が残っていた場所があります。そこに向かいました」
俺たちは驚いた。
フローラは、敵からそこまでは逃れることができたのかと。
「エミール、とりあえず、そこに向かう。先生、具体的にはどこですか」
ようやく話が前に進んだことで、冷静さが戻った。
校長から聞いた場所は、獣人の国の首都からこちらに抜ける表の通りではなく、裏道のようなところだった。
「なんで、ノアがそんなところに……」
「アシュレー夫妻が行方不明になったからよ。」
「えっ!?」
「えっ!!」
俺たちは思わず声を合わせてしまった。
エミールが訝し気に校長に問いただす。
「いや、だからって、ノアにどうしろっていうんですか」
「……魔法使いには、身内にしか残されない独特な絆があるのは、ご存じでしょ。それを探知する魔法犬が開発されたの。それを使って、ノア・アシュレーに探索させようとしてるのよ」
「なっ、誰がそんなことをっ」
「魔法省よ」
「なんで、そこで魔法省が出てくるんですか」
俺たち二人の視線を受けながらも、校長は難しい顔をして、どこまで話すべきか、迷っているようだった。
「そんな迷うような話だったら、今はいい。それよりも、ノアのほうが大事だっ」
俺とエミールは校長を残して、部屋を飛び出した。
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