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第27話 探索の旅立ち(13)
俺たちは部屋に戻ると、制服から普段着に着替え、小さなリュックに荷物をまとめると、学校を後にした。
完全に一日遅れになっているのを考えると、すぐに追い付けるか不安になる。
特にノアは魔法省の奴に連れていかれたとなると、魔法を使って移動してる可能性が高い。
「俺たちはどうするか」
「あの学校の送迎車は、確か特殊免許が必要でしたよね。」
「ああ」
学校に一台しかない魔法の送迎車。
うちの学校でも、あれを運転できるのは、魔法基礎学の講師のハウンド先生だけだ。そして、車の鍵をもっているのも。
いつもは優しげなおじいちゃんなのに、授業となると別人のように厳しくなるハウンド先生の顔を思い浮かべるが、俺たちのために、とかは、ないな……。
「くそっ」
「とりあえず、走るか」
俺たち獣人は、人間よりも運動能力が格段に高い。そのなかでも、我々王族は抜きん出た能力を持っている。
人が一日がかりでも到着できない距離でも、我々なら六時間をあれば、到着できるだろう。ノアが連れていかれた場所は、それくらい離れていた。リュックを抱え直すと、俺たちは校門を駆け出した。
三十分も走らないうちに、いつのまに後ろから来ていた車がクラクションを鳴らした。
「なんだ」
「あ、あれは」
まさかの、魔法の送迎車だった。
俺たちは立ち止まり、送迎車が目の前に止まるのを待った。ゆっくりと、運転席の窓が下がる。
「まったく、君たちはせっかちだなぁ」
しっかりと運転手の制服を着ているハウンド先生が、あきれた顔で俺達を見上げた。
「ハウンド先生……?」
「校長に言われて追いかけてきたんだよ。さぁ、後ろに乗りなさい」
自動で後ろのドアが開く。俺たちは躊躇せずに、乗り込んだ。
「場所、わかってるんですか」
「ん?ああ、校長から聞いてる」
ドアが静かに閉まる。
「この車だったら、どれくらいでつきますかね」
エミールが身を乗り出すように、運転席のハウンド先生に問いかける。
「そうだなぁ……十分もしないで着くと思うがなぁ」
呑気に言うハウンド先生に、思わずイラついてしまう。
そう言っている間にも車の窓の風景が、 まるで、たくさんの色の絵の具が滲んでいくように、どんどんと流れていく。
今頃、ノアはどんな思いで探索の道を歩んでいるのだろうか。それを考えるだけで、心配で胸が痛くなる。
「ノア……無事でいろよ……」
俺は掌を握りしめながら、頭を抱え込んだ。
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