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第30話 足跡を辿れ(1)

 一人置いてけぼりをくった僕は、しばらく頭が働かず、そこに立ち尽くしてしまった。  すっかり日が落ち、冷たい風が僕の頬を撫でていって、ようやくそこから動かなくちゃ、という気になった。  とりあえず、僕の掌の中にあるこの小さな箱の中にいる子犬を出してやろうと、ホックのような鍵をパチンと外す。ぽふん!と、まるで蒸気のようなものが一気に出たかと思ったら、小さい子犬ではなく……大きな茶色い毛がふさふさした犬が現れた。 「え、子犬じゃなかったの!?」  思わず最初に出て来た言葉はそれだった。  僕の腰くらいまである高さのある大型犬。綺麗な毛を撫でたら、柔らかい感触……思わずしゃがみこんで抱きしめてしまった。  温かいなぁ……。 「くぅ~ん」  僕の寂しい気持ちが伝わったのか、少し悲し気に鼻を鳴らすと、僕の頬をぺろぺろと舐め始めた。 「ちょ、ちょっと、やめてって」  僕は思わず笑顔がこぼれた。こいつのおかげで、僕は一人じゃないって思えた。 「さてと、まずは、お前に名前をつけなくちゃな……それとももう、名前があるのかな?」  僕は手元の箱の中身を見たけれど、特に説明するような紙などもない。首輪らしきものもない。仕方なく、僕は思いついた名前で呼んでみた。 「……ポップン?」 「ワン?」  小首を傾げて、僕を見つめる姿が可愛くて、もう一度、ギュウッと抱きしめた。 「じゃあ、お前は、ポップンな?僕と一緒に旅をしてくれるかい?」 「ワフン!」  僕の言ってることがわかるかのように、返事をくれるポップンに、僕は少しだけ癒された気がした。  月明かりが思いのほか明るいから、僕は今のうちにリュックの中身を見てみようと思った。  だいたい、探す旅と言われても、今まで旅行らしい旅行なんて、小学校の時の団体で遠足みたいなのに行ったくらいだし、一人で旅だなんて、初めての経験。どんなものが必要なのか、なんて、想像もつかない。  ごそごそと探っていると、フルブライトさんの言っていた携帯電話と、連絡用の使い魔のセットが出て来た。そして、大き目なお黒い財布。おじいちゃんたちとの写真と小銭が入っている僕の小さいお財布も入ってた。あとは……何やら細長い本らしきもの。  開いてみると、それは獣人の国と人間の国が描かれた折りたたまれた大きな地図だった。
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