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第31話 足跡を辿れ(2)

「こんなの見たって、自分が今どこにいるのかすら、わかんないのに……いっ!?」  なんと、地図の上に、小さな赤い矢印が浮いている!?  僕は地図を持ちながら少し歩いてみた。しかし、ほとんど動きがない。 「この矢印、僕じゃないのかな……」  ただ、よく考えてみれば、この縮尺じゃちょっと歩いたくらいじゃ、動かないのかもしれない、と思い至った。それでも、とりあえず自分が今どこにいるのか、はなんとなくわかった。獣人の国と人間の国の国境近く……それもこの舗装していない道でわかる通り、表通りではない地図を見ても、かなり細い線でしかない。それでも、線があるだけましか。これを見る限り、森を抜けていけば、最寄りの村にまでは行けそうではあった。……しかし、この森の大きさが、全然わからない。本当に、この村は『最寄り』と言えるのだろうか。  そしてリュックの奥の方に、少し硬いパンが2つと、ペットボトルに入った水、そして小さい懐中電灯を見つけた。フルブライトは、魔法の使えない僕のために食料と懐中電灯を入れるくらいの気遣いはあったんだ、と思うと、少しだけホッとした。  さすがに、灯りもなしにあの真っ暗な森の中を抜けていく勇気はなかった。僕は手には地図を持ち、リュックを背負うと、ポップンに声をかけた。 「さぁ、あの森を抜けたところの村に向かおう。そこで、何か食べ物が食べられたらいいんだけど……できるだけ、このパンはギリギリまでとっておきたいしな……」 「ワフン!」  すでに空腹を感じているけれど、なんとか目途がたつまでは我慢しよう、と、懐中電灯の灯りを頼りに僕たちは歩き出した。舗装されていない道を歩く足音が、虫の音とともに響く。僕たちにのしかかるように真っ暗な木々が生い茂っていて、どこからか何かが飛び出しては来やしないかと、ドキドキしながら歩き続ける。 そんな僕を気にもせず、ポップンは僕より少し先を歩いていたが、急に、立ち止まって、鼻先を上に向けて、何か匂いを嗅いでいるみたいだ。 「ポップン?」  僕がポップンの隣に立つと同時に、ポップンが急に道の脇の枯草の中に飛び込んだ。 「え、えぇぇ!?」  ポップンがいるからと思って、どこか安心してたのに、いきなり僕から離れるものだから、慌ててポップンの後を追いかけた。ガサガサと走っていく音を頼りに向かったのだけれど、完全に置いて行かれて、途中で立ち止まる。 「ポップン……どこ行っちゃったの?」  男のくせに、思わず目に涙がたまってきてしまう。なんとか涙を堪えようと、上を向いた時。 「ワォーン」  前の方からポップンの鳴き声が聞こえた。

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