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第35話 足跡を辿れ(6)
僕は、小一時間ほど歩いて、斑柄のおじさんの家にまでついていった。なぜ、僕はこのおじさんと一緒に行く気になったのか、自分でもよくわからない。その時は、一人ぼっちよりも、誰かと一緒にいたいと思ってしまったのかもしれない。
おじさんは、ノロノロと歩く僕のペースに合わせて、ゆっくり歩いてくれて、ポップンも僕の脇を離れずにいてくれた。斑柄のおじさんは、そんなにおしゃべりな獣人ではなく、僕が、なんであんな場所にいたんですか?と問うても、夜の散歩だ、としか答えてくれない。
あの時間に、あんな場所で?と思うものの、もしかして獣人っていうのは、そういうものなのかも?なんて思ってしまった。
斑柄のおじさんの家は、森を抜けた舗装していない道沿いにある一軒家だった。ずいぶんと古そうな建物だったけれど、窓からの灯りと、煙突から出ている白っぽい煙が、家族の存在を感じさせた。
「……ただいま」
木のドアを開きながら、おじさんが入っていく。僕とポップンも、おどおどしながら、家の中に入って行った。
「あら、あんた、遅かったわね……って、誰、この子」
今度は茶トラのおばさんが、お玉を持ちながら立っていた。茶トラの頭に、ジーパンにエプロン姿。
改めて斑柄のおじさんの姿を確認すると、革のジャケットにジーパン姿。獣人というだけで年齢不詳な彼らに、僕は余計におどおどしてしまう。
「……ああ、途中でひろった」
そう言うと、ジャケットを脱いで、少し古い感じのソファの背に放り投げた。
「それより、飯にしよう。こいつも腹をすかせてそうだし」
そう言って、僕の頭をくしゃっと撫でる。
「そうかい。それじゃ、テーブルに出すかね」
チラリと獣人の二人が互いに目を合わせた気がしたけれど、僕は食事にありつけるだけで、十分にありがたかったし、初日から野宿にならなくて済んだことに、神の恵みを感じずにはいられなかった。
茶トラのおばさんの料理は、少し味が薄くて僕には物足りなかったけれど、温かい食べ物がお腹に入ったことと、思いのほか疲れてたせいか、すぐに眠気が襲って来た。
「奥の客間があるから、そこで寝な」
茶トラのおばさんが、僕の隣に立って、部屋まで案内してくれた。
「ありがとうございます……」
「まったく、どんな理由で家出したのかしらないけど、早いとこ、帰って親御さんに謝りな」
「……」
茶トラのおばさんの小言は、ほとんど寝てしまってる僕の耳を通り抜けていった。客間のドアが閉まる直前、ポップンが部屋にすべりこんできた。
「おやおや、あんたもそこで寝るのかい?……まったく。おやすみ」
そして、ドアが閉まり、部屋は真っ暗で、ポップンの瞳だけが光っていた。
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