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第36話 足跡を辿れ(7)

***  ドアを閉めて、リビングに戻った茶トラは、ノアの寝ている部屋のほうをチラリと見てから斑柄のそばによった。 「あんた、あの子、どうするんだい」  心配そうに見上げる茶トラ。自分たちが、任務がなければ、そのまま夫婦になり、あれくらいの子供がいてもおかしくなかった。だから余計に、人間とはいえ、世話をしてやりたくなる。 「……あの方に連絡する」 「あんた……」  斑柄は苦々しい顔をしながら、引き出しの中から使い魔のカプセルを取り出した。ここは獣人の国でも一番はずれにある。携帯電話の電波も届かず、有線の電話もない。 「仕方がないだろう。あれは、ナイラム魔法学校の制服だ。お前も覚えているだろう?キア坊ちゃんが入学前にここに立ち寄って、自慢げに見せてくれたじゃないか。それに、あの子には狼の匂いがプンプンしている」  どのカプセルを使うか、迷う斑柄。 「でも、あの子は人間だろ?」 「わからん。でも、あの子には、何か特別な魔法がかけられている」 「そうなのかい?あたしには、よくわからないけど」 「俺にだって、高度な魔法のことはわからんが、それを感じることくらいはできるさ。あの子には手を出したらマズイ。それくらいはわかる」  斑柄は緊急性の高い順で二番目に高いもののカプセルを選んだ。 「あの子の処置は、あの方に任せるんだ。俺たちじゃ手に負えない。できるだけ、あの子を引き留めておくことだけ考えろ。」  そう言うと斑柄はドアを開けて外に出て行った。 「……あんた」  茶トラは不安そうに斑柄が出ていったドアを見つめ続けた。

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