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第37話 足跡を辿れ(8)

***  温かい布団の中に潜り込みながら、あれ?この匂いは初めての匂い……と思って目が覚めた。ゆっくりと布団から顔をのぞかせると、ここは見覚えのない部屋。そして僕の隣には大きな茶色い犬が、ベッドの半分を占領してた。 「あ、ポップン」  小さな声で呟いたのに、ポップンは耳をピクリとさせると、ムクリと顔をあげた。 「ワン!」  ポップンの鳴き声で、僕は改めて、昨夜の出来事を思い出した。  ここは斑柄と茶トラの獣人夫婦の家だった。僕はあまりに眠くて制服のまま横たわってしまったらしく、ジャケットがくしゃくしゃになってしまってた。 「あー、失敗した……」  僕はベッドから降りると、一度ジャケットを脱いで、パタパタと振った。袖を通して、部屋にあった小さな鏡をのぞく。目立った寝癖はついてないことだけ確認すると、僕はリュックを抱えて、部屋を出た。 「おはようございます」  リビングに行くと、斑柄と茶トラの夫婦が、テーブルに座って朝食を始めているところだった。 「おや、もう起きたのかい?」  茶トラのおばさんが立ち上がって、キッチンのほうに向かった。 「あ、はい。ベッドお借りしてすみませんでした」 「いや、いいんだよ、たまにしか使わないしね」  斑柄のおじさんは、コーヒーを飲みながらも、僕のほうを見ない。それにしても、斑柄のおじさんも、茶トラのおばさんも、綺麗な毛並をしてるなぁ……と、見惚れる。 「ほら、朝飯だよ。食べな」  目の前にスクランブルエッグと分厚いハム、焼きたての丸いパンが並べられた。 「あと、こんなの作ってみたんだけどねぇ。うちには子供がいないから、子供の味がよくわからないけど」  そう言って、コーンがたっぷりのコーンスープが出て来た。とろっとろのスープに湯気が立ち上がる。 「い、いただきます」  まるで家族のような食卓に、思わず、おじいちゃんとおばあちゃんの三人で食べた朝食を思い出す。そのせいで、目に涙が溢れそうになって、急いで袖でぬぐった。そんな僕を、二人は何も言わずに眺めているだけだった。

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