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第38話 足跡を辿れ(9)

「もう行くのかい?」  朝食を食べ終えた僕に、茶トラのおばさんが、心配そうに言う。そして、小さな紙袋を手渡した。 「これ、おばさんが作ったパンと、果物が入ってるから、途中お食べ。」  そして斑柄のおじさんは、昨夜おじさんが来ていた革のジャケットを僕に羽織わせた。 「え、おじさん、これ」 「その格好じゃ、もう寒いだろう。俺は同じのをもう一枚持ってる。お前が着ていけ」  そう言って、僕の背中を軽くたたいた。 「本当は、ちゃんと家に帰れ、と言いたいところなんだがな。それが無理なら、一緒に行ってやりたいが、俺は長いこと、ここを離れられんから」  苦い顔をしながら、茶トラのおばさんの顔を見た。おばさんも、困った顔をしながら頷いた。 「とにかく気を付けていけよ。この道をずっと歩いていけば、この国で最初の大きな村がある。人の足でどれくらいかかるかは知らんがな。そこから先はバスが走ってるはずだ。まずは、その村を目指すことだ」  おじさんとおばさんにペコリと頭を下げて、僕とポップンは村へ向かう道を歩き出す。 「そうだ、坊主、お前、名前は?」  あ、すっかり名乗りもしなかったことを思いだした。 「ノア、ノア・アシュレーです!」  僕は、ニッコリ笑いながら手を振って、前を向くと、早足で歩き出した。 *** 「ノ、ノア・アシュレーだって……?」  斑柄は大きく目を見開きながら、思わず小さく呟いた。 「アシュレーといえば、大魔法使いの……」  驚愕した面持ちで茶トラは斑柄を見上げた。 「ああ、そうだ。よかった。やっぱり、俺たちじゃ無理な相手だった」 「そうだね……」 「と、とにかく、あの方からの連絡を待って、このことをお伝えせねば」  二人は、去っていくノアの後ろ姿をチラリと見ると、そそくさと家の中に戻って行った。