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第39話 足跡を辿れ(10)

***  魔法の送迎車の中で、エミールは携帯電話をかけはじめた。 「どこにかけるんだ」  俺は横にいるエミールをチラリと見た。 「エリィ」 「ああ、あいつにも来てもらったほうがいいか」 「俺たちよりも、あいつのほうが人探しは上手いだろ」  エリィ・アイサール。  五才年上の俺たちの幼馴染であり、魔法学校の先輩でもあり、王家直属の魔法使い。俺もエミールも、ノアのことになると、ブレーキが効かなくなりそうだ。俺たち三人の中で一番冷静でいられそうなエリィがいてくれたほうが、何かと助かる。 「あ、エリィ。今、大丈夫?」  エミールはスピーカーの状態にして、俺にも聞こえるようにした。 『うん?どうかしたのか?』 「ああ、ノアが拉致られた」 『っ!?何ですって!!!』  まるで、携帯電話から飛び出してきそうなくらいの声が車の中で響いた。 「……だから、エリィ、手伝いに来て」 『……わかりました。今はどちらに?』 「連れていかれたと思われる場所に向かってる。一日遅れになってるから、そこから移動してる可能性もあるけど」  エミールは、目的地をエリィに伝えた。 『わかりました。これから向かいます。私が着くまで、そこから移動しないように……レヴィ、大丈夫ですか?』 「……ああ」  本当は大丈夫なんかじゃない。なんとか怒りを爆発させないように、手を握りしめ続けている。 『……急ぎますから』  その一言だけで、通話は終わった。 「レヴィ、焦るなよ」 「わかってるっ」 「……熱くなってるところ悪いんだけど、着いたよ」  ハウンド先生の冷静な声が、俺たちの会話に割って入った。  俺たちは車の外に目をやった。まだ日があるうちに到着できたのはよかったが、こんなところにノアが一人で残されたのか?と思うと、不安になってきた。 「魔法省の誰かが、一緒に行動してるんだろうか」  ポツリと呟きながら、車のドアを開けた。少しだけ冷たい風が、俺の白銀の髪を撫でる。クンッ、と鼻をあげてみるが、ノアの匂いも形跡も感じとれない。 「クソッ、だから人型は嫌なんだ。おい、エミール、もういいだろ、ここなら」  たぶん、この道の先にあるあの森の中に国境があるはずだ。このくらいの距離だったら、もう元の獣人の姿になったって、誰も咎めやしないだろう。エミールの許可の声を聞くのを待たず、俺は元の姿に戻った。
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