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第42話 足跡を辿れ(13)

 部屋の奥に、抱き合った二人のネコを見つけた。怒りの表情の斑柄と、恐怖の表情の茶トラ。 「おい、ここにノアという男の子が来ただろ。嘘をついても無駄だぞ」  俺の睨みに、斑柄のネコが反抗的に見返して来た。 「……ノアの匂いが残ってるんだ」  斑柄のネコの鼻っ面まで顔を寄せる。茶トラのほうは、『ノア』の名前にピクリと反応したのが目の端に見えた。 「し、知らないっ」  それでも、斑柄は答えなかった。生意気に見返してくるこいつの目に、俺の怒りの限界ラインが切れそうになった時。 「レヴィ、この家、ハザール家の持ち物だ」  エリィが冷静な声で、そう告げた。  奴が指さした食器棚の中に、ハザール家の紋章の入った皿が飾られていた。 「何、ハザールだと」  その名前に、俺の野生の勘がピリピリしだした。 「あ、あんたたち、何者だっ。お、狼だからって、ハザールの家に何をしてもいいと……」 「お前のほうこそ、身の程を知れ、と、さっきも言っただろう。」  エミールが冷ややかに、斑柄を見下ろした。 「レヴィ皇太子に対して、正直に答えなかったのだからな」  その言葉を聞いて、 斑柄と茶トラのネコの二人は 、えぇぇっ!!、と声をあげると、腰を抜かしたようだった。 「ノアはいたよな」  俺の問いに、斑柄は相変わらず返事をしない。 「……身体に聞くしかないか」  怒りで歯をむき出しながら俺が斑柄に手を伸ばそうとした時。 「い、いました!」 「おいっ!」  茶トラの女が、斑柄を庇うように前に飛び出して来た。その女を押さえるように肩をつかむ斑柄。 「あの子はもういません」 「いつここを出たのだ」 「今朝です。道沿いを歩いて一番近い村を目指すようでした」  必死になって言う茶トラの様子を見て、彼女は嘘はついていないように思った。 「……ノアのことだ、それほど早くは歩けまい。俺たちの足なら、今日中に追いつける」  エミールの言葉に頷くと、俺たちはすぐに家を飛び出した。